1999 年 31 巻 1 号 p. 49-54
症例は14歳,男子.主訴は失神発作.生来健康であったが,平成5年6月27日100m走直後に失神し,この時脈を触知できず,救急蘇生を受けて回復した.同年7月12日精査加療目的にて当科入院となった.安静時12誘導心電図は正常洞調律,右軸偏位.心臓超音波検査,心臓カテーテル検査では異常を認めなかった.臨床電気生理学的検査の結果,右室流出路起源のverapamil感受性特発性心室頻拍症と診断した.以後verapami1とpropranololの併用により加療中であるが,約4年間の経過観察中心室頻拍は出現していない.
失神発作後早期のホルター心電図で約4分間の心室頻拍が記録された.心室頻拍の発症前後で心拍変動解析を行ったところ, 心室頻拍直前にL F / H F の上昇とHFの低下を認めた.基礎心疾患を有さない右室流出路起源の持続性心室頻拍症において,発作直前および治療前後の心拍変動解析の報告はなく,本例で心拍変動解析を発作直前および治療前後で行ったところ,発作直前のみならず非発作時にも自律神経系の異常が存在し,verapamilとpropranolo1の投与によりこれらの異常が改善した.本例の心室頻拍発症の機序を考える上で重要な所見と思われるので報告する.