心臓
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症例 急性後下壁心筋梗塞発症5日目に生じた完全房室ブロックに対し,血管形成術が有効であった1例
岡本 隆二斉藤 公正宮原 眞敏岡本 紳也牧野 克俊幸治 隆一中野 赳
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1999 年 31 巻 1 号 p. 43-48

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抄録
症例は73歳, 女性.特に著病を認めなかったが,3週間前より労作時に前胸部痛を自覚し,近医を受診した.心電図にてII,III,aVFのST上昇およびV1R増高,V1~4のST低下, 心エコーにて後下壁の壁運動低下,およびCPKとLDHの上昇を認め,急性後下壁心筋梗塞の診断にて入院した.アスピリンと硝酸薬のみにて保存的に経過観察されていたが,入院5日目より完全房室ブロック(AVB)を認めた.硫硝酸アトロピンに反応せず,全身倦怠感を主訴に当院へ転院となった.来院時心拍数36回/分,血圧110/50mmHg,心電図上完全AVBおよび接合部補充調律を認めた.体外式ペースメーカーを挿入し経過を観察したが,ブロックは消失しなかった.心筋梗塞発症8日目に待期的に心臓カテーテル検査を施行,右冠動脈房室枝に完全閉塞を認めた.造影中灌流の改善に伴い,完全AVBがIIおよびI度へ一時的に移行したため,経皮的冠動脈形成術を試みた.バルーン拡張時および脱気時に一致して,高度AVBとI度AVBの移行を再現性よく認めた.術後2日後よりPQ間隔は正常化し,体外式ペースメーカーを抜去した.経過中有意な胸痛,心電図STT変化や心筋逸脱酵素の再上昇を認めなかったため,後下壁心筋梗塞に合併した遅発型完全AVBと診断した.文献上遅発型の完全房室ブロックの機序は代謝異常が主とされているが,本例では血流の改善が有効であったため興味ある症例と考え報告した.
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© 公益財団法人 日本心臓財団
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