抄録
症例:62歳,男性.家族歴は特になし.臨床経過:1994年9月,拡張型心筋症,発作性心房細動を発症.1日ジゴキシン0.25mg,フレカイニド(F)200mgの投与を受けていた.1998年8月26日,約1分の失神発作を自覚し当院へ搬送された.来院時,毎分240/分の心室頻拍を示していた.リドカイン50mg静注にて頻拍は停止し心房細動となった.ホルター心電図にて心室性期外収縮(PVC)を1日1,647個,R on T多発,非持続性心室頻拍を認め,アミオダロン(AMD)1日400mgを1週間投与した後,1日200mgにて維持した.PVC数は約200個へと減少しR on Tの抑制を認めた.
AMD投与による影響を87点体表面電位図と等時線図とで検討した.F200mg投与下ではQTc間隔(QTc)とQTc dispersion(QTcD)はそれぞれ456msec,112 msecで等時線図では前胸部で不均一性の密度が増加していた.F中止によりQTcとQTcDは397 msec,65 msecと改善し等時線図においても不均一性は改善した.AMD 400mg投与下ではQTcは442 msecと延長を示したが,QTcDは43msecと短縮した.そして等時線図においても前胸部の不均一性は改善を示した.
本例においてF投与により心室頻拍が惹起され,QTcとQTcDは増大し,心室興奮の再分極の等時線図は不均一性を示し,AMDによりPVCの抑制とともにQTcとQTcDは改善し,等時線図の不均一性は改善した.以上よりIc群抗不整脈使用にあたっては再分極不均一性の増大に留意する必要があると思われる.