心臓
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31 巻, Supplement4 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 畔柳 三省, 熊谷 哲雄, 松尾 義裕, 山口 吉嗣, 黒須 明, 早乙女 敦子, 徳留 省悟
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 3-10
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1948年から1997年の50年間の東京都23区内の学生のスポーツ中の突然死の疫学調査を実施し,次の結果を得た.秋に多く,冬に少ない.10時と15時をピークにした二峰性の分布をしている.進学すると共に男の比率が高くなる.急性心機能不全は57.5%であり急性心臓死は86.7%を占める.健康群は約8割である.運動中は約6割,運動直後は約2割である.突発死は約半数を占める.個人競技は65%,球技は35%を占める.突発死の割合および健康群の割合は戦場型球技で高く,ネット型球技で低い.学生のスポーツ中の突然死の機序を解明し予防するために,さらなる解析が必要である.
  • 白鳥 健一, 盛岡 茂文, 有吉 孝一, 立道 清
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 11-15
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 猪岡 英二, 梅田 尚子, 轡 義治, 高橋 孝, 佐川 貢一, 猪岡 光
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 16-21
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:救急搬送に際して生ずる加速度変化が血行動態に及ぼす影響を測定しDOAとの関連につき検討した.
    方法:救急車ベットに3方向へ加速度センサーを装着し搬送中の加速度を測定しパソコンメモリーに記録した.健康者7名につき通常の救急車搬送コースおよび菅生自動車競技場で,また16名の心疾患例につき他病院へ搬送中に,Finapresによる一拍毎の血圧およびECGを加速度とともに連続記録した.
    結果と考按:救急搬送時の加速度は最大加速0.304,減速-0.434Gであった.健康者の直線コーステストで血圧は減速時15%の低下,加速時10%の上昇をみた.各症例毎に救急車乗車後安定した血圧からの変化率をみると+8.4%から+115.4%の上昇と-3%から-73.3%の減少を示した.以上の血圧変動は加速度による体内血液の強制移動により生じたと推定された.
    結論:以上より加速度変化により心臓前,後負荷の強制的変動,脳圧上昇が生じこれらがDOAにつながる可能性が推測された.
  • 吉田 謙一
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 22-24
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    法医学は臨床医学と社会との接点にあって,人の死を客観的に評価し,その死における加害者の責任や,外因と内因の寄与度を明らかにする.交通事故が原因の肺動脈血栓,出血性ショックが虚血性心疾患と誤られた症例,交通事故後,入院中,慢性虚血性心疾患が増悪して死亡したと思われる症例,さらに,事故後入院中に,検査目的で上半身を前屈直後に心停止し,アトロピン静注により回復したことより,事故時も迷走神経反射が起こったものと推定した症例などを紹介し,法医解剖の意義について論じる.
  • 新村 一郎, 柴田 利満
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 25-30
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    学童・生徒の心電図検診ではQTc≧0.46秒のQT延長が2~4/1,000名の頻度で検出されるが,その内の2/4は心拍数が85/分以上の頻脈によるBazett補正式の過大評価に起因する.偶然に検出されるQT延長症例に関しては基礎疾患がなく,家族歴でQT延長症例がなく,運動負荷でQT短縮が良好であれば予後良好で,経過観察のみで良いとされてきた.しかし,本症例のようにQT間隔のrateadaptationが良好でも運動時(水泳中)に急死した.今後は顔面冷水浸水負荷,Kchannel openerやNachannel blockerなどの薬物負荷試験,遺伝子解析,さらには新たな危険因子の検出法や重症度判定が要求される.
  • 大村 昌人, 清水 昭彦, 山縣 俊彦, 早野 智子, 田村 健司, 木村 征靖, 板垣 和男, 松崎 益徳
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 31-36
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:18歳,女性.主訴:安静時の意識消失発作.家族歴:母方の祖母に突然死.母親(QTc=0.51),妹(QTc=0.44)にQT延長.現病歴:12歳時の学校検診にて心電図上QT延長(0.56 sec)を指摘された.15および16歳時,安静時に意識消失発作が,18歳時,電話の音で目覚めた直後に数分の意識消失発作を認めたため,当科入院.心電図は,正常洞調律でQTc(0.49)の延長,就寝中にモニター上1分20秒のtorsades de pointes(tdp)を認めた.MAPにてhump等の異常所見は認めなかった.イソプロテレノールや運動負荷では,QT短縮やtdpはなかった.MIBG心筋シンチでは,前中隔に取り込み低下を認めた.以上より,遺伝性QT延長症候群と診断し,β遮断薬の投与を開始し退院となった.その後約1年間経過観察しているが発作は認めていない.難聴を伴わない遺伝性QT延長症候群でRomano-Ward症候群と考えられたが,失神発作が安静あるいは就寝中に起こる点が興味ある点と思われた.
  • 中川 巌, 池主 雅臣, 藤田 聡, 畑田 勝治, 笠井 英裕, 田川 実, 鷲塚 隆, 相澤 義房
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 37-41
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    アミオダロンは半減期が長いため,副作用が生じた場合は適切な対処が重要である.両大血管右室起始症術後の単形性持続性心室頻拍例で,アミオダロン長期内服中に生じた多形性心室頻拍に対する心室ペーシングとメキシレチンの効果を検討した.当科に紹介された時点でアミオダロン(200mg/日)が処方されており,心電図は洞徐脈(毎分37拍)で,QT時間は7 2 0 m s , Q T d i s p e r s i o n ( Q T d ) は2 0 0 m s延長していた.入院後のモニター記録で非持続性多形性心室頻拍が記録されたためにアミオダロンの減量とともに心室ペーシング(毎分70回)を施行した.ペーシング5分後にQT時間は最短(600ms)となり,QTdは80msに縮小した.ペーシングによるQT時間の短縮効果はペーシング中止後も数時間持続した.メキシレチン静注でもQT時間とQTdはほぼ同等に改善した.心室ペーシング・メキシレチンによるQT時間の短縮は入院時にQT時間が最も延長していた前胸部誘導で顕著であった.
  • Ic群とIII群抗不整脈薬投与下でのQT時間の変化について
    永田 義毅, 池田 孝之, 村田 了一, 藤本 学, 中村 三郎
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 42-46
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:62歳,男性.家族歴は特になし.臨床経過:1994年9月,拡張型心筋症,発作性心房細動を発症.1日ジゴキシン0.25mg,フレカイニド(F)200mgの投与を受けていた.1998年8月26日,約1分の失神発作を自覚し当院へ搬送された.来院時,毎分240/分の心室頻拍を示していた.リドカイン50mg静注にて頻拍は停止し心房細動となった.ホルター心電図にて心室性期外収縮(PVC)を1日1,647個,R on T多発,非持続性心室頻拍を認め,アミオダロン(AMD)1日400mgを1週間投与した後,1日200mgにて維持した.PVC数は約200個へと減少しR on Tの抑制を認めた.
    AMD投与による影響を87点体表面電位図と等時線図とで検討した.F200mg投与下ではQTc間隔(QTc)とQTc dispersion(QTcD)はそれぞれ456msec,112 msecで等時線図では前胸部で不均一性の密度が増加していた.F中止によりQTcとQTcDは397 msec,65 msecと改善し等時線図においても不均一性は改善した.AMD 400mg投与下ではQTcは442 msecと延長を示したが,QTcDは43msecと短縮した.そして等時線図においても前胸部の不均一性は改善を示した.
    本例においてF投与により心室頻拍が惹起され,QTcとQTcDは増大し,心室興奮の再分極の等時線図は不均一性を示し,AMDによりPVCの抑制とともにQTcとQTcDは改善し,等時線図の不均一性は改善した.以上よりIc群抗不整脈使用にあたっては再分極不均一性の増大に留意する必要があると思われる.
  • 川端 美穂子, 倉林 学, 中島 弘, 堀川 朋恵, 鈴木 紅, 本川 克彦, 平尾 見三, 鈴木 文男, 畔上 幸司, 比江嶋 一昌
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 47-52
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例1:50歳,男性.42歳時,心房粗動(AFL)となるも放置. 動悸増悪のため入院. F l e c a i n i d e 100mg,verapamil 360mgを開始したが,排便時にwide QRS頻拍(232/分)となり失神.Common AFLに対して下大静脈・三尖弁輪間でカテーテル・アブレーションを施行し,成功.症例2:39歳,男性.36歳時発作性AFL,心房細動(Afib)を指摘されるも放置. A f i b , 心不全のため入院. 心不全は改善したが,Afibはcommon AFLに移行.Pilsicainide 150mg,verapamil 120mgの投与中,歩行時wide QRS頻拍(230/分)となり失神.カテーテル・アブレーション治療によりAFL発作および失神発作は消失した. 本2 症例では, いずれも投薬をI a 群からI c 群に変更後,それまで認められなかった失神が起こるようになり,その際,2例とも労作中1:1房室伝導性AFLからwide QRS頻拍に移行していた.このような血行動態の悪化を伴うproarrhythmiaは,AFLに対するIc群投与では,十分留意すべき点と考えられた.その予防には,心拍数上昇に拮抗する房室伝導抑制薬剤,特にβblockerの十分な投与が重要と考えられた.
  • 山田 さつき, 久賀 圭祐, 瀬尾 由広, 江田 一彦, 軸屋 智昭, 三井 利夫, 山口 巖
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 53-58
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心室性不整脈の発生には自律神経の関与があり,心拍変動の低下は陳旧性心筋梗塞(OMI)例の突然死予測因子とみなされている.先天性QT延長症候群では交感神経節ブロックが有効であるが,OMIではβ 遮断薬が選択されることが多いが, O M I における交感神経節ブロックの効果は明らかでない.【症例】54歳,男性.39歳の時OMIと診断され,47歳より心室期外収縮に対してメキシレチン内服を開始された.1995年3月(51歳),Buerger病に対して左胸部交感神経節(第2,3胸部交感神経節)ブロックが行われた.同年11月9日,消化管感染による敗血症性ショックとなり,持続性心室頻拍(VT)を併発した.VT非出現日の低周波成分(LF)/高周波成分(HF)比は最高値1.2(起床時),夜間睡眠時は0.9であったのに対し,VT出現日は夜間睡眠時もLF/HF比は1.7と高値であった.VT出現直前にはLF,HFいずれも低下し,LF/HF比は2.1に上昇した.その後も発熱,労作に伴いVTが出現し,臨床経過および心拍変動周波数解析から交感神経緊張尤進がVT出現に関与することが示唆された.本症例に対する胸部交感神経節ブロックはBuerger病に対しては有効であったが,心臓に対する明らかな除神経効果は認められなかった.
  • 小原 千明, 小林 洋一, 勝又 亮, 安達 太郎, 浅野 拓, 宮田 彰, 中川 陽之, 丹野 郁, 菊嶋 修示, 馬場 隆男, 片桐 敬
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 59-64
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は70歳, 男性.1998年6月頃から早朝覚醒時の胸痛を訴え近医で狭心症疑いで加療されていた.同年7月1日,早朝覚醒時の胸痛を訴え症状消失後に意識消失発作を認め,精査加療目的で当院入院.非観血的検査で異常を認めずHead-up tilt test (HUT)施行.Isoproterenol(ISP)0.01μg/kg/min負荷HUTでneurally mediated syncope (NMS)が誘発. その直後からII, III, aVF, V5, V6でST上昇,I, aVR, aVL, V1からV3でST下降を認め,狭心症が誘発.心臓カテーテル検査で冠動脈に器質的有意狭窄を認めなかったが,カテーテル刺激による右冠動脈の易攣縮性と左冠動脈のacetylcholine冠動脈内注入で冠攣縮が誘発された.HUTにて誘発されたNMSの発症機序が冠攣縮性狭心症の誘発に関与した可能性が示唆された.
  • 戸兵 雄子, 中沢 潔, 桝井 良裕, 松本 直樹, 龍 祥之助, 新井 まり子, 村山 正博
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 65-71
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は48歳男性.主訴は突然死ニアミス(家人目撃).1997年8月下旬,帰宅後,子供とふざけあっている時に,痙攣を伴う失神発作を起こした.以前より,同様の症状で胸部不快感が起こっていたが放置していた.来院時身体所見,通常の検査,心エコー図に異常はなかった.Treadmill試験の運動開始1~2分にのみ補正QT間隔(QTc)延長を伴うT波の陰性化が見られた.電気生理学的検査では,単発早期刺激で多形性心室頻拍(PVT)が繰り返し誘発可能で,7~9秒で停止するものは入院前の自覚症状と一致した.運動負荷時のT波形変化は極めてまれな波形変化と考えられ,PVT発現性との関連を検討した.T波形変化時のみQTc延長とQTcのdispersionの増加が見られ,PVT発現の基質となり得ると考えられた.QT延長症候群(LQTS)様の特徴が見られたが,不整脈誘発性や不整脈の形態は,LQTSとは異なっていた.
  • 金谷 英樹, 吉村 大輔, 小池 明広, 久間 文明, 下池 英明, 柳 統仁, 大西 康, 植田 典浩, 野崎 雅彦, 丸山 徹, 加治 ...
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 72-77
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    24歳女性.幼少時から単形性心室性期外収縮(VPC)の多発を指摘されるも全く無症状であった.約1カ月前から甘草入りの「スリム茶」を飲用しながらダイエットを行っていたが平成8年12月10日,エアロビクスの帰りに意識消失した.約9分後に救急救命士により心室細動を確認されたため電気的除細動を施行,その後当院ICUに搬送された.この時低カリウム血症を認めたが,精査にて内分泌的疾患の合併はみられなかった.呼吸・循環停止に伴い,高度の低酸素脳症が見られていたが脳浮腫改善薬と高圧酸素療法により著しく改善した.VPCはほぼ二段脈で運動負荷にて消失,負荷後に増加し,器質的心疾患を認めないことから自律神経の関与が示唆された.電気生理学的検査にて,右室流出路自由壁の後方にVPCの最早期興奮部位を認め,これに対してカテーテルアブレーションを試みるも不成功であった.一般に右室流出路起源の特発性心室性期外収縮は比較的予後良好であるとされているが,本症例のようなダイエットを目的とした,激しい運動や食事制限,甘草摂取による低カリウム血症といった要因が重複すれば心室細動を招来しうると考えられた.
  • 正木 理子, 渡辺 一郎, 柳川 新, 中井 俊子, 押川 直廣, 橋本 賢一, 進藤 敦史, 杉村 秀三, 神田 章弘, 小島 利明, 小 ...
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 78-84
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    比較的若年者に発症した可逆的完全房室ブロック2症例を経験した.症例1)は31歳,男性.労作時息切れを主訴に来院し,心拍数26/分の完全房室ブロックを認めた.血液生化学所見には異常を認めなかったが,心エコー図,MRIでは心室中隔基部の菲薄化と壁運動異常を認めた.心筋生検では特異的な炎症像は認めなかったが,心筋の炎症性疾患を疑い,ステロイド療法を開始したところ,房室伝導が回復した.症例2)は32歳,女性.甲状腺機能亢進症の加療中,感冒様症状,意識消失発作を認めた.心筋逸脱酵素の上昇を軽度認めたが,心エコー図上左室壁運動には異常所見を認めなかった.入院翌日,房室伝導が回復した.
  • 長沢 秀彦, 藤木 明, 林 秀樹, 水牧 功一, 碓井 雅博, 井上 博
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 85-90
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は18歳女性である.15歳時にマラソン中に心停止状態で発見され蘇生された.WPW症候群を認め,副伝導路の有効不応期が260msecと短く心房受攻性の亢進を認めた.偽性心室頻拍発作を疑い副伝導路のアブレーションを行った.副伝導路の離断に成功し抗不整脈薬の投与なしで経過観察した.しかし3年後,電車に乗るため走った際に突然倒れ心停止状態となった.蘇生後の電気生理検査では副伝導路の伝導は認めず,イソプロテレノール負荷時の心室早期刺激で多形性心室頻拍が誘発された.心停止の原因として,運動誘発性の多形性心室頻拍が疑われ,ICDを装着した.本例の心停止の原因には,WPW症候群以外に心室筋の異常が関与している可能性が示唆される.
  • 籏 義仁, 千葉 直樹, 照井 克俊, 安孫子 明彦, 鎌田 潤也, 鈴木 知巳, 中居 賢司, 江石 清行, 川副 浩平, 平盛 勝彦
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 91-95
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Barlow's syndrome は, Primary billowing mitral leaflets により僧帽弁逸脱症を生じる症候群である.多くは無症候性で予後は良好であるとされている.しかし,不安,胸痛,動悸,めまいや失神といった症状を認める一群がある.その中にホルター心電図や運動負荷心電図で多源性心室性期外収縮や心室性期外収縮の連発あるいは心室頻拍・心室細動を認めて,突然死の危険性が高い症例があるとする報告がある.今回我々は僧帽弁形成術後に心室細動を発症してICD植込み術を行ったBarlow's syndromeの1例を経験したので報告する.
    症例は39歳男性.うっ血性心不全の既往があり,僧帽弁閉鎖不全症の手術目的で当センターに入院した.心エコー図検査で僧帽弁前後尖ともに巨大で,逸脱によるIII度の僧帽弁逆流を認めた.さらに腱索の延長があり, Barlow's syndrome と診断した.僧帽弁形成術を行い,術後の経過は順調であった.術後の心電図で一過性QT延長を認めた.退院の翌日家族の前で突然意識を失い,家族が心肺蘇生法を行って当センターに搬送した.到着時の心電図は心室細動であり,電気的除細動により洞調律に回復した.加算心電図で心室遅延電位(LP)陽性であり,LPは前胸部下壁面に分布していた.その後に植込み型除細動器(ICD)の植込み術を行った.
  • 阿部 芳久, 門脇 謙, 庄司 亮, 熊谷 肇, 佐藤 匡也, 熊谷 正之
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 96-100
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    アセチルコリン(Ach)負荷により冠攣縮が誘発されたBrugada症候群の2例を報告する.
    症例1:65歳の男性で,主訴は胸痛発作.安静時の心電図で,右脚ブロックと右側胸部誘導にcoved型のST上昇を認めた.右冠動脈へのAch注入後,V1からV3誘導に最大1.4mVのST上昇が出現した.その後,AHA#2の完全途絶をきたす冠攣縮が発生した.この際,II,III,aVF誘導のST上昇に伴いV1からV3誘導のSTは下降した.また,冠攣縮の寛解によりII,III,aVF誘導のSTが基線に復すると同時に,V1からV3誘導のSTは再上昇した.なお,左冠動脈へのAch注入では変化を認めなかった.心室細動は誘発されなかった.本症例から,Brugada型ST上昇は対側の虚血に伴う鏡像的変化をきたすことが示された.
    症例2:48歳の男性で,主訴は失神発作.農作業終了後のビール飲酒中に失禁を伴う失神をきたした.搬送時の心電図で,V1誘導でcoved型を呈する右胸部誘導のST上昇を認めた.また,心室性期外収縮が3連発を含めて頻発していた.右冠動脈ではAch冠注後に右側胸部誘導のSTが一過性に上昇したが,冠攣縮は誘発されなかった.左冠動脈では前下行枝・回旋枝ともにびまん性の冠攣縮が誘発されたが,胸痛や心電図変化は伴わなかった.心室細動は誘発されなかった.失神に不整脈の関与が強く疑われるが,心室細動が誘発されない例の治療方針については一定の見解がなく,今後の検討課題と考えられる.
  • 小川 正浩, 熊谷 浩一郎, 玉利 秀樹, 角田 修, 松本 直通, 権藤 直樹, 野口 博生, 安田 智生, 中島 英子, 案浦 美雪, ...
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 101-107
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は28歳男性.動悸・眼前暗黒感を主訴に近医受診した際,心電図上左脚ブロック・下方軸の持続性単形性心室頻拍(SMVT)を指摘されたため当科に入院した.
    洞調律時に右側前胸部誘導でBrugada型ST上昇を認めた.運動負荷,isoproterenol(ISP)負荷ではVTは誘発されなかったが,procainamide,disopyramideの負荷により右側前胸部誘導のBrugada型ST上昇が著明となり,これに引き続きclinical VTと同形のSMVTが再現性を持って誘発された.EPSではcontro1およびISP負荷下でのプログラム刺激(期外刺激3連発・burst刺激)でVT・VFは誘発されず,procainamide負荷後のみSMVTが誘発された.ペーシングおよびverapami1による停止効果を認めた.VTの機序としてtriggered activityが考えられた.Identical pace mapが得られ,VT中の最早期興奮部位である右室流出路に対してab1ationを施行したところprocainamide投与にてもVTは誘発不能となった.この様にIa群抗不整脈薬投与によりBrugada型ST上昇が著明となり,それに伴いVTの自然発生が誘発されることは極めて稀であり,Brugada症候群の一亜型とも考えられる症例を経験したので報告する.
  • 高木 雅彦, 相原 直彦, 田口 敦史, 清水 渉, 須山 和弘, 栗田 隆志, 鎌倉 史郎
    1999 年 31 巻 Supplement4 号 p. 108-112
    発行日: 1999/12/05
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【対象,方法】1985年から1997年の間に当センターに入院した特発性心室細動(VF)の患者のうち,安静時心電図にてII,III,aVFにJ型ST上昇を認める8例を対象とした.これらをII,III,aVFのみにJ型ST上昇を認める3例(I群)と,Brugada症候群でII,III,aVFにもJ型ST上昇を認める5例(A+I群)に分け,その臨床的特徴を比較検討した.【結果】全例男性で,発症はいずれも安静時,夜間から早朝にかけてであった.また全例でVFの自然発作または電気生理学的検査(EPS)にてVFの誘発を認めた.EPS時いずれも心内の異常電位を認めなかった.Holter ECG上の心室性期外収縮(PVC)は両群とも極めて少なく,0-1個/日であった.Treadmill運動負荷試験を施行したA十I群3例全例,I群3例中2例に,early recovery phaseにてSTの再上昇を認めた.【結語】安静時心電図にてII,III,aVFのみにJ型ST上昇を認める特発性心室細動症例の中には,Brugada症候群と同様の臨床的特徴を有する症例が存在し,Brugada症候群の一亜型の可能性が示唆された.
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