抄録
心室性不整脈の発生には自律神経の関与があり,心拍変動の低下は陳旧性心筋梗塞(OMI)例の突然死予測因子とみなされている.先天性QT延長症候群では交感神経節ブロックが有効であるが,OMIではβ 遮断薬が選択されることが多いが, O M I における交感神経節ブロックの効果は明らかでない.【症例】54歳,男性.39歳の時OMIと診断され,47歳より心室期外収縮に対してメキシレチン内服を開始された.1995年3月(51歳),Buerger病に対して左胸部交感神経節(第2,3胸部交感神経節)ブロックが行われた.同年11月9日,消化管感染による敗血症性ショックとなり,持続性心室頻拍(VT)を併発した.VT非出現日の低周波成分(LF)/高周波成分(HF)比は最高値1.2(起床時),夜間睡眠時は0.9であったのに対し,VT出現日は夜間睡眠時もLF/HF比は1.7と高値であった.VT出現直前にはLF,HFいずれも低下し,LF/HF比は2.1に上昇した.その後も発熱,労作に伴いVTが出現し,臨床経過および心拍変動周波数解析から交感神経緊張尤進がVT出現に関与することが示唆された.本症例に対する胸部交感神経節ブロックはBuerger病に対しては有効であったが,心臓に対する明らかな除神経効果は認められなかった.