2001 年 33 巻 9 号 p. 693-706
古くから心臓循環器系におけるアデノシンの調節作用は推測されていたが,近年アデノシンの受容体のサブタイプがクローニングされ次々に明らかにされつつあることと,選択的なアデノシン受容体アゴニストおよびアンタゴニストが登場してきて,数多くのアデノシンの生理病理学的研究成果が報告されている.
ここでは,過去30年間にわたり我々が行ってきた,主にイヌ心臓の局所灌流標本を用いての発表論文をべースに,多岐にわたるアデノシンの薬理作用について記している.取り上げたものは洞調律,心室性調律,洞房伝導,房室伝導,心房筋収縮張力,心室筋収縮張力および冠血管反応に及ぼすアデノシンの薬理作用の分析である.この総説では,特にアデノシンと心臓作用の類似しているAChの心臓作用との比較検討を念頭において記述している.