2001 年 33 巻 9 号 p. 713-718
症例は73歳男性,過去にヨード造影剤の使用歴あるも副作用なし.増悪する胸部圧迫感を主訴に当院を受診し,不安定狭心症と診断され入院となった.体格はやせ型で,頻脈を認めた.入院後は硝酸薬・カルシウム拮抗薬の使用により,発作はみられなかった.入院翌日冠動脈造影を施行した.ヨード造影剤の予備テストでは異常を認めなかった.左冠動脈造影時,硝酸薬を冠動脈内に投与後造影を行った.しかし,高度の冠攣縮を生じ,左前下行枝・左回旋枝とも完全閉塞となった.そのためショックとなり,昇圧薬の使用と硝酸薬の冠動脈内注入を繰り返し,漸く冠攣縮を解除することができた.本症例にはその後の検査で甲状腺機能充進症とI型アレルギーの存在が判明した.ヨード造影剤による副作用で特殊なものとして冠攣縮があるが,過去の報告は比較的まれであり,冠攣縮の機序に関してもいまだ明確にはなっていない.本症例はヨード造影剤による冠攣縮が疑われたが,その他の要因も関与しているものと考えられた.