2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 103-107
症例は,58歳男性.28歳時に下壁梗塞を発症し,以後近医に通院中であった.58歳時に初めて持続性心室頻拍(VT)発作が出現し,その後VT発作が頻回となったため,当院に紹介入院となった.心臓電気生理学的検査では,血圧低下を伴うclinical VTが誘発され,停止にはcardioversion(CV)を要した.生命予後改善のため,植え込み型除細動器(ICD)の植え込み術を施行した.植え込み時のテストでは,VTは12J,心室細動は6Jの電気ショックにて停止することが確認された.以後,flecainideの内服にて経過良好であった.植え込み後50日目に出現した持続性VTに対して,植え込み後2回目のICDの作動が発生した.30JのCVでもVTは停止せず,徐拍化するのみであった.しかし,ICDはVTの徐拍化を治療成功と判断したため,その後VTの頻拍レートが上昇する度に同様の過程が繰り返された. 合計約50回のCVが施行された後に,当院に緊急入院となった.Lidocaine, disopyramide, procainamideの静注は,いずれも無効であった.Nifekalantの単回静注(0.23mg/kg)では, VTは停止しなかった.しかし,その静注後に,再度,ICDによる30JのCVを施行したところ,VTは停止した.その後は,nifekalantの持続静注(0.2mg/kg/時)を開始した.数時間後に持続性V T が再出現したが, 抗頻拍ペーシングにより停止した.以後,持続性VTの出現は全く認められなかった.ICD electrical stormにnifekalantが有効であった1例と考えられた.