心臓
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第13回心臓性急死研究会 塩酸ニフェカラントが著効した直流除細動抵抗性心室細動の1例
慶田 毅彦沖重 薫矢野 佳笹野 哲郎
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2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 97-102

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抄録

【症例】症例は67歳男性.1999年12月31日21時突然胸痛が出現し,救急来院された.来院時血圧52mmHgとショック状態で, 12誘導心電図にてaVL, V1~V5にST上昇を認めた.冠動脈造影にて左主幹部に75%狭窄を認めた.造影直後に多形性心室頻拍出現し,心室細動に移行した.塩酸リドカインの静注および直流除細動を繰り返すも効果なく,次第にflatに近い心室細動波形に移行した.そのため心臓マッサージしながら塩酸ニフェカラント50mg(0.8mg/kg)を5分間で点滴静注したところ,心室細動波形の振幅が有意に増高し,多形性心室頻拍に移行した後,自然に洞調律に戻った.投与前後でのQTc時間は475msecから520msecへ有意に延長した.洞調律復帰後0.4mg/kg/hrで持続静注したところ,持続性心室頻拍,心室細動の再発は認めなかった.
【考察】急性心筋梗塞における虚血領域では細胞内ATPが減少し,ATP感受性カリウムチャネルが開口するため,活動電位持続時間と不応期が不均一に短縮され,リエントリーが生じやすい状態となる.塩酸ニフェカラントは遅延整流カリウム電流を遮断し,その結果活動電位持続時間および不応期を延長することによって,本例のような難治性心室細動に著効したと推測した.また本例は広範囲心筋梗塞により重症のポンプ不全も合併していた.しかし塩酸ニフェカラントは活動電位持続時間延長により心筋収縮力を増強する陽性変力作用を有しており,循環動態を悪化させることはなかったと考える.

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