心臓
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33 巻, Supplement3 号
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  • 剖検例について
    畔柳 三省, 熊谷 哲雄, 松尾 義裕, 黒須 明, 早乙女 敦子, 長井 敏明, 徳留 省悟
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 3-12
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1995年から1998年の4年間の東京都23区内の入浴中死亡例のうち剖検により死因を決定された例について疫学調査を実施し次の結果を得た.(1)対象は709件であり剖検率は23.5%である.(2)年齢分布は0歳から96歳であり,平均年齢は65.8±16.2歳である.(3)冬季に多く,夏季に少ない.(4)健康群は26.0%を,疾患群は63.2%を占める.(5)内因死は63.9%,外因死は33.0%を占める.(6)虚血性心疾患が37.8%,溺死が28.8%の順に多い.(7)60歳未満の比率が高い死因はくも膜下出血,急性アルコール中毒である.(8)浴槽・サウナでは虚血性心疾患の比率が高く,洗い場・シャワーでは脳動脈破綻の比率が高い.(9)約半数が飲酒入浴をしており,外因死ではその比率が高い.(10)各発生場所での飲酒していないものの比率はシャワー73%,洗い場72%,浴槽52%の順に高い.サウナでは17%である.(11)湯深と死因との間に関連はみられなかった.以上から飲酒入浴は止めたほうがよいと思われ,特にサウナでの飲酒入浴は禁止するのが望ましい.また,洗い場でのお湯の汲み出しは避けたほうがよいのかもしれず,静水圧と死因との関連はみられなかった.
  • 中高齢患者と若年健常者の比較
    永澤 悦伸, 小森 貞嘉, 佐藤 みつ子, 梅谷 健, 渡辺 雄一郎, 田村 康二
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 13-18
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【背景】入浴中の突然死の死因は血管系疾患,次いで溺死が挙げられる.【目的】入浴中の循環動態と心臓自律神経活動の変化を中高齢患者と若年健常者で測定し,両群の変化の違いから入浴中の突然死および溺死の原因を検討した.【方法】対象は,重大な心疾患を有しない中高齢患者9名(74.6±10.7歳),若年健常者9名(27.4±9.6歳).座位入浴40℃・10分間とその前後の血圧を指基部血圧計で測定.同時に防水型ホルター心電図記録を施行した. MemCalcにて30秒毎のHF(心臓副交感神経活動の指標),LF/HF比(心臓交感神経活動の指標)を検討した.【結果】心拍数は若年健常者群で漸増したが,中高齢患者群では入浴後急激に増加した後一定となり,5分前後にわずかな減少を認めた. HF成分は若年健常者で漸滅したが,中高齢患者群では有意な変化は見られなかった. L F / H F 比は若年健常者群で3 分前後に一時減少したが,その後は増加傾向を認めた.中高齢患者群では4分前後に一時減少した.血圧は若年健常者群で漸次低下したが,中高齢患者群では一度上昇した後低下した.【考察】中高齢患の入浴中の突然死の原因は,二つあると考えられた.入浴直後は,血圧・心拍数上昇に伴い心臓の仕事量が増大し血管系疾患が発群し易いと考えられた.続く入浴4分前後には,血圧低下に対して心臓交感神経活動を維持できず,徐脈・低血圧を来たし,意識障害の発生により溺死に至る可能性が考えられた.
  • 栗田 康生, 三田村 秀雄, 高月 誠司, 岩田 道圭, 林田 健太郎, 大橋 成孝, 福田 有希子, 家田 真樹, 杵渕 修, 三好 俊一 ...
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 19-23
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は父親も完全房室ブロックを認める30歳男性.1999年12月と2000年3月,いずれも朝の通動途中に駅の階段を駆け上った直後に失神を来たし,当院に紹介入院した.心エコー,冠動脈造影,左室造影は正常で,ホルター心電図は高度房室ブロックでPP<440msのときに7連発の非持続性心室頻拍(NSVT)を認めた.電気生理検査(EPS)では洞機能は正常であったが,HVレベルの高度房室ブロックを認め,イソプロテレノール負荷下早期期外刺激で260/分の15連発のNSVTが誘発された.運動負宿中も高度房室ブロックであったが, P P <680ms ,RR<800ms, QTcO.447で心室性期外収縮(PVC)の出現を認め,最大運動負荷時PP600ms,RR680ms, QTcO.485でPVC3段脈となり,運動終了後PVCは消失した.高度房室ブロックであるが失神は運動時のみで,運動に伴いQTc延長とPVCが増加し,torsade de pointesの可能性も疑われた.房室ブロックのみならずNSVTによる失神の可能性もあり,DDDペースメーカーのみでは不十分と考えdual chamberの植込み型除細動器(ICD)を植込んだ.房室ブロックを認める失神例でも頻脈性不整脈が関わっている可能性を念頭におき,諸検査をすすめるべきと考えられた.
  • 籏 義仁, 千葉 直樹, 堀田 一彦, 平盛 勝彦, 荒畑 喜一, 西城 健
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 24-29
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Partial atrial standstillと3度房室ブロックを合併し,早期に永久ペースメーカ植込み術を行ったEmery-Dreifuss型筋ジストロフィー(EDMD)の兄弟例を報告する.
    症例1は20歳の男性.15歳のときに学校検診で心電図異常を指摘された.血清CPK276IU/l.臨床心臓電気生理検査(EPS)で,partial atrial stand-still,洞機能不全と房室結節機能不全があった.後頸部に軽度の拘縮を認めた.19歳のときに3度房室ブロックのため,他院で永久ペースメーカ植込み術を行った.
    症例2は15歳の男性(症例1の弟).14歳のときに学校検診で3度房室ブロックを指摘された.肘部,アキレス腱部,後頸部筋の拘縮と上腕-腓骨筋型の筋萎縮と筋力低下を認めた.血清CPK467IU/l.EPSでpartial atrial standstillも確認された.すでに3度房室ブロックであり,運動耐容能の改善と突然死の予防目的に早期の永久ペースメーカ植込み術を行った.
    胸部造影CT, MRIで2症例ともに右室と右房の拡大を認めた.
    遺伝子解析を行い,共にX染色体劣性遺伝形式のEDMD(X-EDMD)の疾患遺伝子であるSTA遺伝子に変異があり,X-EDMDと診断された.
  • 安田 雄一郎, 柳 統仁, 下池 英明, 小池 明広, 大西 康, 植田 典浩, 丸山 徹, 加治 良一
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 30-34
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は70歳男性.10年前に下壁心筋梗塞の既往.今回狭心症の再発に対し近医で冠動脈造影を含む心臓カテーテル検査を施行,その後から腎機能低下が出現したため一時的人工透析の後,当科へ入院.入院後,両側足背動脈を触知するにもかかわらず両側先端に紫斑を認め,好酸球増多と合わせてコレステロール塞栓症を疑い,腎機能障害と肺うっ血に対して人工透析と人工呼吸管理を行った.しかし経過中肺炎と播種性血管内凝固症候群を併発して入院1カ月目に死亡した.剖検にて大動脈は潰瘍形成を伴う高度の粥状硬化,また腎・脾・膵・胃にコレステロール塞栓を認め,コレステロール塞栓症と診断.心臓は線維化と好中球の浸潤を認めた.コレステロール塞栓症は医原性にも生じ,診断困難で予後不良の疾患であり本例はその発症・治療経過などが教訓的であったため今回報告する.
  • 阿部 芳久, 門協 謙, 寺田 豊, 熊谷 肇, 佐藤 匡也, 熊谷 正之
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 35-39
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性肺動脈血栓塞栓症の危険因子のひとつにペースメーカー植え込み術があげられている.ペースメーカー症例全体としては有症候性に本疾患を合併することは稀とされているが,いったん発症した場合には致死的となりうる.今回我々は,ペースメーカー植え込み術後に発症した急性肺動脈血栓塞栓症に対して血栓溶解療法を行った症例を報告する.
    症例は,11年前に洞不全症候群の診断でペースメーカー植え込み術を行った65歳の女性(DDDモード,1回交換).突然の呼吸困難のため緊急受診した.心拍数110/分,チアノーゼあり.心電図では洞性頻拍とSISIISIIIパターンを,胸部X線では右肺野の透過性亢進を認めた.PaO2は45mmHg,PaCO2は25.4mmHg,SaO2は82.9%であった.直ちに行った肺動脈造影で,右肺動脈主幹部をほぼ閉塞する血栓像を認めたことから急性肺動脈血栓塞栓症と診断し,組織プラスミノーゲン・アクチベーターと抗凝固療法で治療した.約1カ月後の肺動脈造影では欠損像や血流障害はなく,左右の上下肢静脈造影ではペースメーカー植え込み側に極く軽度の欠損像を認めただけであった.ペースメーカー・リード挿入以外に血栓形成の危険因子がないことから,リードに起因した静脈血栓による塞栓症と考えた.
    ペースメーカー患者では,静脈内血栓の頻度は高いが臨床的に問題となる症例は稀とされる.しかし常に塞栓子形成の危険にさらされていることに留意する必要があると考える.
  • 河野 恆輔, 山本 博昭, 甲田 隆, 八巻 文貴, 佐藤 渉, 番場 誉
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 40-44
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    9歳の男児で度重なる失神歴を有するQT延長症候群の一例を経験した.12誘導心電図では,心拍数58bpmでQT時間は0.56秒,QTcは0.54と延長.イソプロテレノール負荷時の心電図では,心拍数は111bpmまで上昇し,QT時間は0.44秒でQTcは0.58とさらなる延長を来たした.トレッドミル負荷試験では,心拍数は57から144bpmまで上昇したが,安静時QaT400msecから340msecまでしか短縮せず, Q T a p e x / R R s l o p e は0 . 1 0 6 とQTのrate adaptationは不良であった.症例の弟の安静時12誘導心電図は,心拍数は62bpmでQT時間は0 . 4 8 秒, Q T c は0 . 5 2 と延長し, トレッドミル負荷試験からもとめたQTapex/RR slopeは0.06とQTのrate adaptationは極めて不良であった.今後厳重な経過観察が必要と考えられた.
  • 広瀬 尚徳, 篠崎 毅, 馬場 恵夫, 加藤 浩, Kaoru Iwabuchi, 三浦 昌人, 福地 満正, 渡辺 淳, 白土 邦男, 堀 ...
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 45-48
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    虚血性心筋症(LVEF14%)の56歳女性,冠動脈2枝病変の繰り返す再狭窄に対してPTCAを計5回施行している.この間,虚血とは無関係のVfを発症し,ICD植え込み目的に当科入院となった.
    この症例は経過中に急性心筋梗塞を発生しdirect PTCAを施行,虚血再灌流に成功したが,その後に心不全とVT/Vfを起こした.
    IABPにより心機能は改善したが,VTを繰り返すためアミオダロンを400mg/day内服開始した.しかし,翌日QTcが450msから550msまで延長,torsade de pointes(TdP)を頻発し直流除細動を64回要した.
    このTdPはIABPの再挿入では抑制されず,心室ペーシングが有効であった.
    アミオダロン中止後にQTcは正常化し,CABGとICD植え込みを施行することができた.
    低心機能の症例においてアミオダロン内服48時間以内という早期にQT延長をきたし,TdP頻発した症例を経験した.
  • 鵜野 起久也, 西里 仁男, 下重 晋也, 宮本 憲次郎, 土橋 和文, 三浦 哲嗣, 村上 弘則, 島本 和明
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 49-55
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は16歳,女性.母親は25歳時に突然死.12歳時に意識消失を主訴に近医受診.心電図・心精査にて明らかな器質的心疾患を認めず.ホルター心電図にて連結期の極めて短い(<300msec)PVCにひき続いて出現するTorsade de Pointes(TdP)を認めた.TdPに対してpropranololとdisopyramideの併用療法が開始された. 以後徐々に増量されpro-pranolol 150mg/日およびdisopyramide 600mg/日にて経過観察されていたが前失神発作が出現するようになってきたため当科入院となる.入院後施行されたトレッドミル検査・イソプロテレノール段階的持続静注検査にてTdPは誘発されなかったが,心臓電気生理検査にて左室心尖部近傍にDADによると思われるh u m p の出現を認めた. Short-cou-pled PVCとひき続くnon-sustained TdPに対しMg静注は有効であり, flecainideの静注によりPVCとTdPは完全に消失した.本症例に対しICDとflecainideを含めた抗不整脈薬との併用療法を開始している.
  • 臼田 和生, 小林 大祐, 打越 学, 永田 義毅, 竹森 一司, 石川 忠夫, 畑崎 喜芳
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 56-62
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は13歳,女子.1999年11月8日朝シャワー浴後,突然意識消失をきたし近医受診.心電図モニター上,心拍数増加と共に心室性期外収縮と,頻拍周期が非常に短い非持続性多形性心室頻拍の頻発が認められた.12月25日再度意識消失を認め当院小児科入院.多形性心室頻拍が意識消失の原因と考えられ加療目的に当科紹介された.12誘導心電図は正常洞調律で基礎心疾患はみられず,多形性心室頻拍出現様式よりカテコラミン感受性多形性心室頻拍と診断.多形性心室頻拍第1拍目は常に単発心室性期外収縮と同一のQRS波形であったため,この心室性期外収縮を標的にカテーテルアブレーションを施行。心室性期外収縮の起源は右室流出路で,ペースマッピングを指標に通電し,術後trigger期外収縮および多形性心室頻拍は消失した.以後,無投薬下で経過観察中であるが失神発作は認められない.カテコラミン感受性多形性心室頻拍の治療として,多形性心室頻拍第1拍目を標的としたアブレーションが有効と思われた.
  • 安田 正之, 中里 祐二, 山下 晴世, 河野 安伸, 峰田 自章, 中里 馨, 戸叶 隆司, 住吉 正孝, 中田 八洲郎, 代田 浩之
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 63-67
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,女性.36歳時,僧帽弁狭窄症と診断され,経皮的経静脈性僧帽弁交連切開術を施行した.46歳時より薬剤抵抗性の頻脈性心房細動発作を繰り返し,計3回の電気的除細動術を行った.発作時の自覚症状が強く,抗不整脈薬の効果が不確実であるため,房室接合部に対し高周波カテーテルアブレーションを施行した.焼灼後,心拍数約47/分の安定した接合部性補充調律に移行し,補充調律下にペースメーカー植込み術を施行した.焼灼約20分後,繰り返すTorsade de pointes型多形性心室頻拍が出現,心室ペーシングはそれ自体誘因となり無効であった. Lidocaineおよび硫酸マグネシウムの静注後,本不整脈は消失し,安定した心室ペーシングが可能となった.本例では,房室接合部の焼灼に伴う徐拍化が不応期の不均一性をもたらし,多形性心室頻拍の誘引になったと考えられた.房室接合部アブレーション術後は,早期よりペーシングによる心拍数維持を行い,心電図モニターなど厳重な経過観察が必要と考えられた.
  • 宮下 豊久, 神谷 仁, 坪井 正人, 黒河内 典夫, 片桐 有一, 武井 学, 宮澤 泉
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 68-73
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性.入院5日前より微熱,咽頭痛あり.入院当日,トイレで意識消失発作を起こしたが数分で回復した.その後も同様の意識消失発作を起こし当院入院となった.心電図上,完全房室ブロックと5秒以上の心停止を認めたため,一時ペーシングを施行した.翌日には38℃ 台の発熱が出現するようになった.入院8日目に心機能の低下と上室性不整脈,心室頻拍,torsades de pointesが出現,その翌日,心原性ショックとなり心室細動が出現,大動脈内バルンパンピング(IABP)を開始し,人工呼吸器の管理とした.強心剤,血管拡張剤,利尿剤を使用して心不全のコントロールはついたが,非持続性の多形性心室頻拍が頻回に出現し,心室細動の再発を認め,電気的除細動で対処した.リドカイン,メキシレチンの静脈内投与は効果がなく,アプリンジンの投与にて不整脈は完全に抑制された.その後,徐々に心機能は回復し,IABP,人工呼吸器を離脱した.安定期の冠動脈造影,左室造影,右心カテーテル検査,心筋シンチでは異常は認められなかった.各種ウイルス抗体価のペア血清において有意な上昇を認めなかったが,感冒様症状が先行し,急激な心機能低下と致死的不整脈の出現から,劇症型の急性心筋炎が考えられた.今回,IABP,塩酸アプリンジンが救命に大きく貢献したので報告する.
  • 渡邉 滋子, 高野 幸一, 東 晃生, 原 和義, 矢部 彰久, 轟 正勝, 堀中 繁夫, 松岡 博昭
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 74-78
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【症例1】79歳,女性,週3回,各4時間の維持透析患者.発作性心房細動(Af)に対しpilsicainide(P)75mg/日が投与され,以後,房室ブロックに続き持続性心室頻拍(VT)が出現直流通電(CV)を行うもVTは持続.P過剰投与による催不整脈と考えられ,頻回の透析により改善.【症例2】48歳,女性,週3回,各4時間の維持透析患者.Afに対するP50mg/日投与後からの失神発作を主訴に当院救急外来受診.来院時150/minのwide QRS Tachycardiaを認めCVにて停止.当院来院前日に前医で行ったHolter心電図ではVTをほぼ一日中認めた.透析患者における腎排泄性抗不整脈剤使用の際には,透析での除去率を考慮した少量からの用量設定が必要で,その催不整脈作用に十分注意する必要があると考えられた.
  • 加藤 林也, 山田 高資, 山本 春光, 高田 康夫, 富田 保志, 北野 知基, 渡辺 俊也
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 79-83
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】塩酸ニフェカラント(シンビット)の重症心室性不整脈抑制効果を検討.
    【対象・方法】対象は薬剤抵抗性または頻回の直流除細動を要した心室頻拍(VT)あるいは心室細動(VF)患者14例(男11例,平均年齢57.5歳)であり,基礎心疾患は急性心筋梗塞2例,陳旧心筋梗塞2例,拡張型心筋症3例,肥大型心筋症2例,不整脈原性右室異形成症1例,僧帽弁閉鎖不全症1例の計11例に認め,他の3例では基礎心疾患を認めない心肺停止患者であった.シンビットは急速静注(15~25mg/5min)および持続静注(10~20mg/hr)を行った.VT/VF抑制効果の判定は急速静注による停止効果(直注直後までに停止した場合を有効)と持続静注による予防効果(再発のない場合を有効)について検討した.
    【結果】VT/VFの抑制効果は14例中7例(停止効果;6/11例,予防効果;6/9例)で認められた.有効例の7例中2例は低酸素脳症後遺症にて他院に長期入院中であり,3例は追跡期間中の2~6カ月後に死亡し,外来通院可能なのは2例のみである.生存例ではアミオダロンまたはβブロッカーを経口投与中である.停止・予防効果のいずれも無効であった7例中6例は早期に死亡し,他の1例は外来通院中である.
    【結語】薬剤抵抗性または頻回の直流除細動を要する致死性不整脈患者において,シンビットは高い有効性を示し,緊急時の第1選択薬となり得ると考えられた.
  • 網野 真理, 吉岡 公一郎, 田辺 晃久, 半田 俊之介, 中川 儀英, 加藤 洋隆, 馬上 喜裕, 本多 ゆみえ, 山本 五十年, 猪口 ...
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 84-89
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    2000年4月~11月の間に当院救命救急センターに搬送された院外心肺停止例(CPA)連続121例中,心肺蘇生中に心室性頻拍症/心室細動(VT/Vf)が認められた7例に対しニフェカラントを使用しその効果について検討した.
    内訳は虚血性心疾患5例,大動脈解離1例,溺水1例,男性6例,女性1例,平均年齢60歳.全例エピネフリン10-31mg投与後心拍再開が確認されたが,VT/Vfに対してリドカイン50-200mg静脈内投与および2回以上の直流通電(DC)は無効であった.ニフェカラント0.3mg/kg静注後のDCによりVT/Vfは停止し,引き続き0.4mg/kgによる持続投与を施行した.経過中,2例にVTの再発がみられたが5例では再発は認められなかった.しかし,7例中6例は徐拍化を呈し,1例は突然の心停止によりいずれも死亡した.
    CPA症例におけるリドカイン抵抗性VT/Vfでは,ニフェカラント単回投与後のDCは全例で有効であった.しかし,持続投与を行うべきかに関しては今後の検討が必要と考えられた.
  • 小泉 智三, 藤本 陽, 行木 瑞雄, 谷川 高士, 岩瀬 孝, 石綿 清雄, 西山 信一郎, 中西 成元, 百村 伸一
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 90
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    塩酸ニフェカラント(NFK)は,新しい純粋な遅延整流カリウムチャネル遮断薬(静注剤)であり,心室頻拍や心室細動(VT/Vf)の治療薬としてその効果が期待されている.しかし,急性心筋梗塞(AMI)での再灌流療法時に生じたVT/Vfに対するその臨床効果については充分に検討されていない.今回,AMIの再灌流療法時に生じたリドカイン抵抗性の持続性VTに対してNFKが著効した2例を経験したので報告する.
  • 武田 聡, 尾畑 純栄, 輿水 崇鏡, 岩崎 宏, 一木 美英, 松山 謙, 露口 直彦
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 91-96
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    塩酸ニフェカラントの心室頻拍心室細動への有効性の報告は多いが,急性心筋梗塞,特に超急性期での有効性の報告は機序的に不明な点もあり少ない.今回我々は,超急性期の当薬剤の投与が有効であった急性心筋梗塞の3例を経験したので,ここに報告する.
    症例は右冠動脈2例,左冠動脈前下行枝1例の急性心筋梗塞症例.1例は冠動脈内ステント留置治療のみであったが,残り2例はステント留置治療に加えIABPおよびIABP+PCPSを使用した.1例は心室頻拍持続中より当薬剤静注を行い頻拍は投与中に停止した.残りの2例では当薬剤投与前より電気的除細動を繰り返していたが再発性,当薬剤静注のみでは頻拍発作は停止しなかったが,その後の1回の電気的除細動にて発作は停止して,その後は頻拍の再発は認められなかった.
    これら今回の3症例より,当薬剤の急性心筋梗塞における心室頻拍心室細動への頻拍停止効果および再発予防効果での有効性を確認できた.当薬剤の投与は今後の急性心筋梗塞,超急性期の難治性心室頻拍心室細動治療における一つの治療選択としての可能性を示唆するものである.
  • 慶田 毅彦, 沖重 薫, 矢野 佳, 笹野 哲郎
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 97-102
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【症例】症例は67歳男性.1999年12月31日21時突然胸痛が出現し,救急来院された.来院時血圧52mmHgとショック状態で, 12誘導心電図にてaVL, V1~V5にST上昇を認めた.冠動脈造影にて左主幹部に75%狭窄を認めた.造影直後に多形性心室頻拍出現し,心室細動に移行した.塩酸リドカインの静注および直流除細動を繰り返すも効果なく,次第にflatに近い心室細動波形に移行した.そのため心臓マッサージしながら塩酸ニフェカラント50mg(0.8mg/kg)を5分間で点滴静注したところ,心室細動波形の振幅が有意に増高し,多形性心室頻拍に移行した後,自然に洞調律に戻った.投与前後でのQTc時間は475msecから520msecへ有意に延長した.洞調律復帰後0.4mg/kg/hrで持続静注したところ,持続性心室頻拍,心室細動の再発は認めなかった.
    【考察】急性心筋梗塞における虚血領域では細胞内ATPが減少し,ATP感受性カリウムチャネルが開口するため,活動電位持続時間と不応期が不均一に短縮され,リエントリーが生じやすい状態となる.塩酸ニフェカラントは遅延整流カリウム電流を遮断し,その結果活動電位持続時間および不応期を延長することによって,本例のような難治性心室細動に著効したと推測した.また本例は広範囲心筋梗塞により重症のポンプ不全も合併していた.しかし塩酸ニフェカラントは活動電位持続時間延長により心筋収縮力を増強する陽性変力作用を有しており,循環動態を悪化させることはなかったと考える.
  • 山田 功, 村上 善正, 岩田 一城, 津田 誠, 岡本 光弘, 外山 淳治, 伊藤 昭男, 坪井 直哉, 吉田 幸彦, 因田 恭也, 平井 ...
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 103-107
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,58歳男性.28歳時に下壁梗塞を発症し,以後近医に通院中であった.58歳時に初めて持続性心室頻拍(VT)発作が出現し,その後VT発作が頻回となったため,当院に紹介入院となった.心臓電気生理学的検査では,血圧低下を伴うclinical VTが誘発され,停止にはcardioversion(CV)を要した.生命予後改善のため,植え込み型除細動器(ICD)の植え込み術を施行した.植え込み時のテストでは,VTは12J,心室細動は6Jの電気ショックにて停止することが確認された.以後,flecainideの内服にて経過良好であった.植え込み後50日目に出現した持続性VTに対して,植え込み後2回目のICDの作動が発生した.30JのCVでもVTは停止せず,徐拍化するのみであった.しかし,ICDはVTの徐拍化を治療成功と判断したため,その後VTの頻拍レートが上昇する度に同様の過程が繰り返された. 合計約50回のCVが施行された後に,当院に緊急入院となった.Lidocaine, disopyramide, procainamideの静注は,いずれも無効であった.Nifekalantの単回静注(0.23mg/kg)では, VTは停止しなかった.しかし,その静注後に,再度,ICDによる30JのCVを施行したところ,VTは停止した.その後は,nifekalantの持続静注(0.2mg/kg/時)を開始した.数時間後に持続性V T が再出現したが, 抗頻拍ペーシングにより停止した.以後,持続性VTの出現は全く認められなかった.ICD electrical stormにnifekalantが有効であった1例と考えられた.
  • 小川 聡
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 108-111
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 大坪 仁, 大賀 雅信, 平木 達朗, 吉田 輝久, 松本 学, 濱田 敬史, 久原 伊知郎, 大内田 昌直, 池田 久雄, 今泉 勉
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 112-116
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は30歳女性.生来健康で心疾患の既往はない.1999年8月夏祭りの綱引きの最中に突然意識消失し心肺停止となり,その場に偶然居合わせた医師により心肺蘇生術施行された.搬送中の救急車内でのモニター心電図にて心室細動が確認され電気的除細動により洞調律へ復し当院入院となった.原因検索のために,心臓カテーテル検査等諸検査施行したが器質的心疾患は認めず,電気生理検査でも頻拍性不整脈は誘発されなかった.しかし,入院中にトイレの中で再び意識消失しているのを発見され心肺蘇生術施行.モニター心電図にて再び心室細動が確認され電気的除細動にて回復.本症例は,心室細動の明らかな原因がなく特発性心室細動と診断し,植込み型除細動器(ICD)植込み術を施行した.今回2度に及ぶ心臓細動発作から奇跡的に生還し,ICDによる治療を行った特発性心室細動の1例を経験した.
  • 村井 久純, 阪上 学, 国枝 武重, 平澤 元朗, 小林 大祐, 佐伯 隆広, 湯淺 豊司, 長井 英夫, 小林 健一, 高田 重男, 島 ...
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 117-122
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    我々はピルジカイニド投与により興味ある心電図変化を示した特発性心室細動の1例を経験した.症例は60歳男性,平成10年12月,家族の眼前で失神.救急隊到着時に心室細動(VF)を認め,直流通電にて洞調律に復した.精査上,基礎心疾患を認めず電気生理学的検査においてもVFは誘発されなかった.その後植え込み型除細動器(ICD)を装着し外来経過観察とした.平成12年に2回,ICDの作動を認めたため潜在性Brugada症候群の可能性を考えピルジカイニド負荷検査を行った.負荷直後より心室性期外収縮(PVC)が頻発し,45分後にVFが認められICDの作動により停止した.この際, PVC後の代償性休止期を伴ったときに胸部誘導V1-2のR'-ST上昇がより著明にみられBrugada型心電図に近い波形を呈した.また,V4-6のQRS終末部にノッチの増高も認めた.Brugada症候群の類縁疾患である可能性も考えられ,興味ある1例と考えられた.
  • 鷲塚 隆, 池主 雅臣, 保坂 幸男, 渡部 裕, 奥村 浩史, 田川 実, 古嶋 博司, 阿部 晃, 相澤 義房
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 123-127
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Brugada症候群は体表面心電図上,右側胸部誘導でのST上昇と右脚ブロック波形を特徴とし,心室細動により心臓突然死をきたす.Brugada症候群の心電図変化は自律神経や各種薬剤により修飾されることや,日差変動を有することが報告され,その診断にIa, Ic群薬剤が有用とされている.今回,我々は各種I群薬剤に対する,STレベルの反応性の差異の有無を検討したので報告する.症例はBrugada型心電図が記録され,心臓電気生理検査を施行した5症例(男性5例,平均年齢59±14歳)で,うち3例では臨床的に心室細動が確認されている.3例ともflecainide(2mg/kg),procainamide(10mg/kg)およびpilsicainide(1mg/kg)の静注による薬剤負荷を行い,V2誘導でのST変化の程度,QRS幅および心拍数の変化を比較検討した.5例中2例で薬剤負荷試験でV2誘導でのST上昇の程度に0.15mV以上の差異を認めた。QRS幅はいずれの薬剤でも有意に延長したが,その変化には薬剤間で差異は認めなかった.以上の結果よりBrugada症候群が疑われる症例では初回の負荷試験が陰性の場合でも,再検査の必要性を検討する必要がある.
  • 上山 剛, 清水 昭彦, 山縣 俊彦, 江里 正弘, 板垣 和男, 大村 昌人, 木村 征靖, 吉賀 康裕, 鵜木 哲秀, 森谷 浩四郎, ...
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 128-133
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    71歳の男性.69歳時にテレビを見ている時にはじめて失神した.71歳時に車の運転中に失神による交通事故を起こし,搬送途中の救急車内でも失神しモニターで心室細動(VF)が確認された.搬送後の洞調律時心電図はBrugada型心電図を呈していた.心エコーでは器質的異常を認めなかったが,冠動脈造影検査にて第一対角枝に90%の狭窄が判明した.同部位に対する経皮的冠動脈形成術を施行後の心臓電気生理学的検査においてVFが再現性をもって誘発されたがニフェカラント15mg静注後に行った誘発試験ではVFは誘発されなかった.本例には発作性心房細動の合併もあり停止目的でフレカイニドを使用したところST上昇が顕著となった.以上より1枝病変を合併したBrugada症候群と診断し,後日ICDの植え込みを施行した.その後,入院中に発見された肺癌に対して左肺上葉切除術が行われ,その手術当日の深夜にVFの自然発作が生じICDが作動している.本例はBrugada症候群としてはVFの初発年齢が高く,ニフェカラントによってVF誘発抑制効果を認めた点で興味深いと思われた.
  • 阪部 優夫, 藤木 明, 西田 邦洋, 長沢 秀彦, 水牧 功一, 井上 博
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 134-139
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【症例】36歳の男性で,19歳時に心電図前胸部誘導にsaddle back型のST上昇を指摘され,経過観察とされていた.36歳時就寝中に嘔気と尿失禁あり当院入院となった.入院時意識清明,洞調律でV2-3のsaddle back型のST上昇を伴う右脚ブロックを認めBrugada症候群と診断された.電気生理検査で心室頻拍(Vf)が誘発され,植え込み型除細動器(ICD)を装着した.経過観察中にICDにてVfの自然発作が確認された.【目的】前述の症例をふまえて無症候性Brugada症候群(心電図前胸部誘導に特徴的ST変化と右脚ブロックを認めるものの失神発作を伴わない)の頻度および経過を検討した.【対象・方法】1990年に定期健康診断を受診した2,298名について,無症候性Brugada症候群の頻度と,1999年までの10年間における経年的心電図変化および致死性不整脈発生の有無を検討した.【結果】無症候性Brugada症候群は2,298名中41例(1.8%)に認められた.経年的心電図変化が41例中13例に認められたが,致死性不整脈や突然死はなかった.【考察】経年的心電図変化など,症候性のBrugada症候群と同様の所見を認める例においても致死性不整脈の発生頻度は低いものと考えられた.
  • 山田 健史, 渡辺 一郎, 小島 利明, 神田 章弘, 押川 直廣, 正木 理子, 大久保 公恵, 橋本 賢一, 奥村 恭男, 大矢 俊之, ...
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 140-143
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    標準12誘導心電図(ECG)上右脚ブロック(RBBB)およびV1~V3誘導のST上昇(ST↑)を呈する症例に対し加算平均心電図(SAECG)・電気生理学的検査(EPS)を行い,心室細動(Vf)の誘発および突然死との関連を検討した.対象はRBBBとST↑を有する32例.心電図上coved(CO)型は15例,saddle back(SB)型は17例.SAECG上,心室遅延電位(LP)はCO型ST↑例では8例(67%),SB型ST↑例では4例(30%)で陽性であった.EPSにてCO型ST↑例では9例(90%)でVfが誘発され,SB型ST↑例ではLP陰性例でVfは誘発されなかった.Follow up中2例が突然死し,どちらの症例もCO型ST↑例であり,1例はLP陽性でVfが誘発された症例であった. 無症候性でもCO型ST↑例やLP陽性例ではEPS等にて精査すべきと思われる.
  • 笠尾 昌史, 白井 徹郎, 服藤 克文, 土田 健治, 落合 秀宣, 井上 清
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 145-150
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例1は60歳,男性.検診の心電図にて右側前胸部誘導でのR'-ST上昇を指摘され当院を紹介受診.諸検査にて器質的心疾患は否定されたが, pil-sicainide(Pil)投与後のST上昇増大が強く,電気生理学的検査(EPS)を施行した.EPSでは右室流出路からの2連発早期刺激により非持続性多形性心室頻拍が再現性をもって誘発され,家族歴,既往歴がないことから無症候性Brugada症候群と診断した.症例2は48歳,男性.回転性眩暈を主訴に当院を受診した際の心電図にて右側前胸部誘導でのR'-ST上昇を認めたが,諸検査で器質的心疾患を示唆する所見はなかった.Pil投与後のST上昇増大が著明で,EPSでは右室流出路からの2連発早期刺激にて心室細動が誘発され,電気的除細動を要した.本例も家族歴,既往歴がなく無症候性Brugada症候群と診断した.Brugada症候群が心臓性急死の原因疾患として注目される中,無症候性にBrugada型心電図を呈する例に遭遇する機会は増加したが,それらの扱いに一定の基準がない.今回の2症例はいずれも無症候性にBrugada型心電図を呈しながら,Pil投与時のST変化が著明で,EPSで重症心室性不整脈が誘発された.今回の経験から,無症候性にBrugada型心電図を呈する症例の中から真のBrugada症候群を同定する最初の手順としては,Pil投与時のST変化が参考になると思われた.
  • 中沢 潔, 岸 良示, 戸兵 雄子, 高木 明彦, 長田 圭三, 桜井 庸晴, 新井 まり子, 龍 祥之助, 三宅 良彦
    2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 151-154
    発行日: 2001/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Brugada症候群は,SCN5A遺伝子異常の家族性突然死症候群である.Brugada症候群の家族の検査は必須と考えており,Brugada症候群の家族の心電図を中心に報告する.当科でBrugada症候群が疑われた患者のうち,12人の協力が得られたので,その家族30人との計42人を対象とした.心電図異常は3家族(3/12家族:25%)に,それぞれ1人ずつ(3/30人:10%)認められた.Brugada症候群のみならず,Lenegre症候群やQT延長症候群を疑う家族員があった.また,Ic群抗不整脈薬負荷を行うことにより,Brugada症候群発見の頻度はさらに増加する可能性があると考えられた.
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