心臓
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第13回心臓性急死研究会 無症候性Brugada症候群の2例
笠尾 昌史白井 徹郎服藤 克文土田 健治落合 秀宣井上 清
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2001 年 33 巻 Supplement3 号 p. 145-150

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抄録

症例1は60歳,男性.検診の心電図にて右側前胸部誘導でのR'-ST上昇を指摘され当院を紹介受診.諸検査にて器質的心疾患は否定されたが, pil-sicainide(Pil)投与後のST上昇増大が強く,電気生理学的検査(EPS)を施行した.EPSでは右室流出路からの2連発早期刺激により非持続性多形性心室頻拍が再現性をもって誘発され,家族歴,既往歴がないことから無症候性Brugada症候群と診断した.症例2は48歳,男性.回転性眩暈を主訴に当院を受診した際の心電図にて右側前胸部誘導でのR'-ST上昇を認めたが,諸検査で器質的心疾患を示唆する所見はなかった.Pil投与後のST上昇増大が著明で,EPSでは右室流出路からの2連発早期刺激にて心室細動が誘発され,電気的除細動を要した.本例も家族歴,既往歴がなく無症候性Brugada症候群と診断した.Brugada症候群が心臓性急死の原因疾患として注目される中,無症候性にBrugada型心電図を呈する例に遭遇する機会は増加したが,それらの扱いに一定の基準がない.今回の2症例はいずれも無症候性にBrugada型心電図を呈しながら,Pil投与時のST変化が著明で,EPSで重症心室性不整脈が誘発された.今回の経験から,無症候性にBrugada型心電図を呈する症例の中から真のBrugada症候群を同定する最初の手順としては,Pil投与時のST変化が参考になると思われた.

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