心臓
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症例 右室梗塞と脂肪塞栓症候群の合併に伴う呼吸循環不全に対しPCPSが奏功した1例
河野 浩貴一瀬 博之藤本 良久浦澤 延幸田崎 直仁川上 徹谷口 学久留島 秀治治田 精一森下 篤島倉 唯行
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2002 年 34 巻 10 号 p. 791-795

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抄録

症例は50歳男性.自動車運転中に急性心筋梗塞を発症.Adams-Stokes症候群を合併し,自損事故により右大腿骨を骨折した.全身状態を鑑みて,急性心筋梗塞に対しては非侵襲的に保存的治療,大腿骨骨折に対しては牽引による保存的治療の方針とした.入院翌日に不穏,譫妄状態となり,進行性の低酸素血症をきたしたため,脂肪塞栓症候群の診断で人工呼吸管理とした.やがて無尿状態となり血圧が低下し始め,人工透析療法,カテコールアミン等による集中治療管理を行うも,循環動態の維持が因難となった.本症例の病態は,右室梗塞に伴う低心拍出状態に肺脂肪塞栓症による肺高血圧および動脈血酸素化障害が合併したものであると考え,循環動態維持,動脈血酸素化の目的で第9病日よりPCPS(経皮的心肺補助装置)による呼吸循環補助を開始した.PCPS開始後は循環動態が安定し,第13病日にはPCPSから離脱できた.PCPS離脱後は肺炎併発による呼吸不全,腎不全,意識障害が遷延したものの,徐々に全身状態の改善がみられた.人工呼吸管理,透析療法から離脱し,大腿骨骨折に伴う活動制限以外の日常生活動作が自立するまでに回復した第70日病に,大腿骨骨折に対する観血的治療目的で転院となった.右室梗塞と脂肪塞栓症候群の併発という病態に対してPCPSが有効な治療手段となったと考えられた.

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