心臓
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症例 開頭術後に巨大陰性T波と心機能障害を合併した1例
田邉 卓爾伊藤 一貴全 完彦坂 高徹足立 芳彦加藤 周司東 秋弘杉原 洋樹中川 雅夫
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2002 年 34 巻 5 号 p. 427-434

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抄録

患者は57歳の男性で,下垂体腫瘍の摘出目的にて当院の脳外科に入院した.下垂体腫瘍摘出(開頭術)後の心電図では,広範な誘導で陰性T波が認められた.急性期の断層心エコーでは心尖部を中心に高度な壁運動低下を示し,たこつぼ型左室壁運動異常と考えらた.99mTctetrofosmin心筋SPECT(TF)では,心尖部を中心に前壁および側壁に集積低下所見が認められた.同時期の123I-BMIPP心筋SPECT(BMIPP)では心尖部を中心に広範囲な集積低下が認められたが,TFより広範囲であった.123I-MIBG心筋SPECT(MIBG)では同様に心尖部中心に広範軽度高値が認められた.第21病日の冠動脈造影では有意狭窄は認められず,冠攣縮は誘発されなかった.左室造影では,前壁および側壁に低収縮から無収縮が認められた.1カ月後のTFでは集積低下所見は改善しが,BMIPP,MIBGでは急性期と比較して変化は認められなかった.第50病日の左室造影は正常化した.経時的な核医学検査の所見は早期再灌流に成功した急性心筋梗塞や不安定狭心症におけるstunned myocardiumの経過に類似していた.本症例では心外膜血管に狭窄病変はなく,攣縮も誘発されなかったことより,冠微小循環の障害が考えられた.本症例では急性期にたこつぼ型左室壁運動異常が認められたが,その機序として冠微小循環障害が考えられた.

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