心臓
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症例 冠動脈ステント留置後の抗血小板薬チクロピジンによりvascular ectasiaからの下血をきたした1例
金田 朋也堀田 祐紀内山 勝晴尾崎 一晶渕崎 宇一郎宮森 弘年
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2002 年 34 巻 5 号 p. 435-440

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抄録

冠動脈ステント留置後のチクロピジンの内服により,回盲部vascular ectasiaからの出血を認めた,まれな狭心症の1例を経験した.症例は69歳,女性.右冠動脈seg.3に>75%狭窄を認め,PTCAにてcoronary stentを留置した.翌日よりチクロピジン200mg/dayの内服を開始したが,内服11日後多量の鮮血便を認め緊急入院となった.入院時Hb7.9g/dlと高度の貧血を認め,直ちに大腸内視鏡検査を施行し,回盲部に大量の凝血塊を認めた.また,出血シンチグラムでも,回盲部に間欠的な出血所見および異常集積を認めた.一旦保存的に経過観察となり,翌日再び大腸内視鏡検査を行った.回盲部に径3mm程度のvascular ectasiaを認め,同部位からの出血と診断した.Clipping,輸血および止血剤投与にてvascular ectasiaは消失し,貧血は軽快した.アスピリンの投与を再開し,その後Hb値は12.0g/dlへと改善した.
冠動脈ステント留置後に下血を認めた際には,大腸からのvascular ectasiaからの出血も考慮する必要があると考えられた.

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