心臓
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HEART's Original [症例] 若年発症の家族性心房細動に対してカテーテルアブレーションを施行した1例
花澤 康司静田 聡西山 慶土井 孝浩古川 裕中川 義久北 徹赤尾 昌治木村 剛
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2007 年 39 巻 10 号 p. 895-901

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抄録

症例は30歳,男性.18歳時より動悸を自覚していた.27歳時に症状悪化にて当科を受診し,発作性心房細動(Af)・心房頻拍(AT)を指摘された.家族内に父方の祖父・叔父・父・妹がAfを指摘されている.電気生理学的検査にて冠静脈洞入ロ部後縁,His束近傍,上大静脈を起源とするATを認め,このうち冠静脈洞入口部後縁起源のATについてはカテーテルアブレーションによる焼灼に成功した.その後は薬物治療にて洞調律を維持していたが,最近になって動悸発作の頻度が増加したため再度カテーテルアブレーション施行目的に入院した.アブレーション直前に心腔内電気的除細動を試みたところ,一度ATを経てから洞調律に復帰した.この傾向はAfに対する電気的除細動の際,必ず認められた.その後,右房を起源とする連結時間の短い心房期外収縮(APC)を頻回に認め,右房後壁と分界稜中部に2種類のAPCの起源を同定し焼灼に成功した.三尖弁峡部にブロックラインを作成し手術を終了したが,ブロックライン作成時にもカテーテル先端の焼灼部位を最早期とするAPCが頻発しAfを生じた.術4日後にもAfが再発し,除細動のあとATを経由して洞調律に復帰した.
本症例は,濃厚なAfの家族歴から家族性Afと考えられ,何らかの遺伝子異常を背景として異常自動能を持った細胞が右房内に広範に存在することが示唆された.

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