1975 年 7 巻 1 号 p. 81-87
大動脈弁膜症の1症例に心電図上+129°の右軸偏位遠伴う完全右脚ブロックを見た.ペクトル心電図では水平面図でQRS環主部の著明な右前方偏位を示したが臨床所見と合致せず心の病理学的検索を行なった.リウマチ性大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症,高度左室肥大と中等度右室肥大,左室壁の広汎な線維症に加えて,左室心尖部修壁に,小型塞栓性心筋硬塞が確認された.刺激伝導系の組織学的検索では,右脚の異常早期分岐が認められ,この分岐部と左脚後放線分岐部にまたがってリウマチ性心筋炎による線維症に基づく杜絶が証明された.His束匠体と左脚前放線の変化は軽度であった事から,特異な心電図所見は両脚ブロックによるものと判断した.従来報告されている診断基準と異なり本例では正常中隔充奮力なかば保持されている事実は伝導系の杜絶様式に関係剛る様に思われた.