心臓
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研究 高齢者の心電気軸 剖検1,000例の臨床病理学的研究
杉浦 昌也大川 真一郎平岡 啓佑桑島 巌上田 慶二
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1975 年 7 巻 3 号 p. 309-314

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抄録

左軸偏位の成因はGrant以来冠状動脈硬化(心筋線維症ないし心筋硬塞)に関係した伝導障害(左脚前枝ブロック)とされる.本報はその病理学的再検討である.
56歳以上の老人1,000例の電気軸は正常58%,準左軸偏位(0~-29°)21.9%,左軸偏位(-30°~-180°)17.4%,右軸偏位2.7%であった.病理学的検討の結果,左軸偏位は心筋硬塞を20%,右脚プロックを16.1%に合併したが,他の軸群と比較して冠硬化,心筋線維症,心肥大のいずれとも特に有意な相関はない.また右軸偏位は右脚プロックを66.7%,右室肥大を22.2%に合併したが冠硬化,心筋線維症の合併頻度は他軸群と有意差を示さなかった.以上より左軸偏位の1部(20%)は心筋硬塞のごとく大きい壊死により説明されるが,その大部分は冠硬化,心筋線維症に無関係であり脚プロックに見られると同様の激伝導系(分岐部)の変性,線維症との関係を推定刺した.

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