抄録
新しい抗不整脈剤etafenone hydrochlorideの電気生理学的作用を,組織浴灌流のウサギまたはイヌ心筋標本ならびにウサギ摘出灌流心で検討した.使用濃度は一部実験を除き0.5~10.0mg/lであった.
本剤は活動電位波形に影響しない濃度で洞結節・房室接合部およびPurkinje細胞の自動能を抑制する.心房・心室筋の活動電位持続時間と全不応期は延長,活動電位立ち上がり速度は低下し,伝導時間は延長した.高濃度では静止膜電位が減少,脱分極は不完全となる.心房筋は心室・Purkinje細胞に比して感受性が高い.定頻度刺激下のHis東電位直接記録で,本剤は心房内・房室結節内伝導を遅延させ,His-Purkinjeおよび心室内伝導時間も延長させた.洞調律時には房室伝導抑制は著明でなかった、以上は本剤の異所自動充進による不整脈や洞頻脈,リエソトリー性上室頻拍などに対する有効性を示唆するものと思われる.