抄録
過去18年間に開心術を行った166例のVSD+AIの手術成績と術後1年以上の遠隔成績をVSD閉鎖のみ,大動脈弁形成術,大動脈弁置換術の術式別に調べ,本症の手術適応を検討した.
VSD閉鎖のみを行った86例の術後遠隔期のAIは術前のAIの程度と密接に関係し,AIが軽症であるほど遠隔期AIは改善する傾向が見られた.大動脈弁形成術を行った40例では下垂した大動脈弁の両側を吊り上げ,VSDを直接縫合した症例のAI改善率がもっともよかった.大動脈弁置換を行った37例では死亡率,術後合併症率が最も高く,まったく合併症のなかった症例は術後年数が3年以内の8例のみで,これらの症例の多くは人工弁専門外来で厳密な経過観察を受けていた.遠隔成績からいうと,本症の手術適応は軽症例はVSD閉鎖のみ,中等症以上は大動脈弁形成手術を第一選択として,大動脈弁置換術はもはや大動脈弁が修復不可能な症例に行うべきである.