【目的】
Peutz-Jeghers症候群(PJS) は大きな有茎性ポリープを切除することが腸重積の予防に非常に有効である.ダブバルーン小腸内視鏡(DBE)でのクロスドクリップ法によるポリープ切除は,ポリープ数の増加,偶発症の減少が見込める.一方で大きなポリープは癌化することがあるため,ポリペクトミー後の検体回収が必要になる.さらにPJSは開腹歴の既往のためDBE挿入困難例で長時間の検査が多い為,安全で確実なDBE処置が求められる.
【方法】
2006年6月より2018年9月までに,DBEを施行したPJS12例,全検査37件を分析し,クロスドクリップ併用群と非併用群に分けて後ろ向きに比較し,当科におけるPJSの小腸ポリープ切除の特徴を遡及的に検討した.
【結果】
男性4例,女性8例.初回検査時の平均年齢は34.7(16-64) 歳,12例中開腹歴があったのは11例で,そのうち10例で癒着高度のため挿入困難であった.DBEによる小腸ポリープ切除施行例が10例(クロスドクリップ併用4例),2例は観察のみであった.全小腸が観察可能であったのは,13例中9例で,全小腸の平均挿入時間(検査時間)は122分(207分)であった.ポリープ切除10例中クロスドクリップ併用群4例の平均ポリープ処置数は17.5個,非併用群6例の平均ポリープ切除数3.5個であった.合併症に関しては,6例で高度の出血が見られたが,いずれもクロスドクリップ非併用群であった.
【結論】
PJSに対する内視鏡的ポリープ切除では,クロスドクリップを併用することで,より多くのポリープ処置が安全に可能であった.