2020 年 61 巻 5 号 p. 192-199
本研究では,日本,ベトナムおよびインドネシアで栽培され,各国で販売されている精米(Oryza sativa L.)63試料を対象として,カドミウム(Cd)およびヒ素(As)濃度の測定を行い,米摂取による成人および小児のCdとAsの推定一日摂取量を算出した.精米中のCdおよびAs濃度は,誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて測定した.日本,ベトナムおよびインドネシア産米中のCd濃度の50%タイル値は0.036,0.035および0.022mg/kg,As濃度の50%タイル値は0.101,0,142および0.038mg/kgであった.また,3か国の米のCdおよびAs濃度を比較したところ,Cd濃度では有意差は認められなかったが,ベトナム産米のAs濃度は日本およびインドネシア産米よりも有意に高かった.3か国の米からのCdあるいはAs摂取による成人と小児への非発がん性へのリスクを評価するため,Target hazard quotient (THQ)を算出した.3か国の米において,CdあるいはAs摂取による小児のTHQの50%タイル値は成人のTHQの50%タイル値よりも高かったが,これらのTHQの50%タイル値は1未満であり,非発がん性への健康リスクが低い可能性が示唆された.