食品衛生学雑誌
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イシナギ肝臓を原因食とする中毒症状の観察
新間 弥一郎田口 脩子
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1961 年 2 巻 1 号 p. 28-34

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抄録

イシナギ肝臓による食中毒が, 単なるA過剰症によるのか, あるいは他の特異な毒物によるのか検討するために, 東京築地市場に入荷した3尾のイシナギの肝臓を試料とし, それぞれの脂質を分析したのち, 人間およびシロネズミに対して, これら3個の試料から分離した抽出油, 抽出残留物, 肝臓エキスおよび調理した肝臓を与えた結果, シロネズミでは抽出残留物および肝臓エキスは全く中毒症状を現わさず, 抽出油中にはよりA毒性の強い物質を認めなかった.
人間では3個の試料のうち, 含油量22.3%, 油中のA濃度117万IUの肝臓を調理して食した場合に, 皮膚落屑を伴う特有の中毒症状が現われたが, 摂取した肝臓中のA量から予想されたよりも, 中毒症状は激しく, かつ長期にわたり, 単なるA過剰症とは断定できなかった.

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© 社団法人 日本食品衛生学会
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