食品衛生学雑誌
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牛乳中に含まれる細菌発育阻止物質 (特に抗生物質) の鑑別検査法について
松井 武夫佐野 玲子赤尾 頼幸神林 三男
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1961 年 2 巻 1 号 p. 34-45

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抄録

T. T. C. test の応用によって, 牛乳中に含まれる抗生物質を鑑別する方法について, 基礎的な実験を実施したところ, 次に述べるような結果が得られた.
(1) 脱脂乳培地中に抗生物質を順次増量しながら, これにS. th. を馴化継代することによって, ペニシリン, テラマイシン, アクロマイシン, ストレプトマイシンおよびクロロマイセチンのそれぞれに耐性を持ったS. th. 耐性菌を得ることができた. これらの各耐性菌のT. T. C. test における発色限界は, ペニシリンでは24U/ml以上, テラマイシンでは16μg/ml, アクロマイシンでは2.4μg/ml以上, ストレプトマイシンでは128μg/ml以上, クロロマイセチンでは32μg/mlである.
(2) S. th. の各抗生物質耐性菌の耐性は, それぞれの抗生物質に対して特異性がある. しかしテラマイシンおよびアクロマイシン耐性菌は相互に交叉した耐性を持っている.
(3) 各抗生物質に対する耐性は, 限界希釈法による純化によって安定させることができた. しかしそれらの菌がT. T. C. test において示す発色時間の遅延, 発色状態の減少など非耐性菌の示す結果と幾分異る点については, 基礎的に検討する余地がある.
(4) T. T. C. test に際して85°で5分間加熱することは, 試験の結果には何ら影響を与えない.
以上の基礎的な実験に基づき, これを実際に応用するならば, 牛乳中に含まれる抗生物質の鑑別は可能であると考える.

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