抄録
12歳女児で,術前に非反回神経を想定できた小児甲状腺びまん性硬化型乳頭癌例につき報告した。初診時すでに左声帯麻痺を認め,頸部エコー検査では甲状腺はびまん性に腫大し微細な高エコー輝点を認めたが明らかな結節性病変はなかった。CT,MRI ならびに穿刺吸引細胞診より,甲状腺びまん性硬化型乳頭癌,両頸部リンパ節転移,気管食道浸潤,肺転移(T4aN1bM1)と診断された。また右鎖骨下動脈起始異常があり右側の非反回神経の存在が疑われた。甲状腺全摘術,両頸部郭清術(D3b),気管層状切除術,左反回神経・食道筋層合併切除を施行した。術前の予想通り右側は右迷走神経より直接分岐する右側非反回神経であった。術後に右声帯麻痺という手術合併症をおこすことなく,患児の QOL の維持が可能であった。甲状腺の手術を担当する耳鼻咽喉・頭頸部外科医として,頻度は低いものの非反回神経の可能性に常に留意すべきであると思われた。