抄録
新生児期の聴覚スクリーニング(以下 NHS)は Pass(両側及び一側 Pass を含む)しながら,発達の過程で難聴が疑われ精査を実施した小児の聴力・言語発達・教育環境の実態を検討し今後行うべき対応について報告した。難聴は高度難聴,中等度難聴,一側性の高度難聴例があり,父親の暴力による心因性難聴の一例もあった。両側 Pass 例では難聴に気付いた年齢が高く,言語獲得の敏感期を無為に過ごさない為の配慮が必要であった。更に,検査器機の違いが産む Pass・Refer の判断への注意も指摘した。難聴の早期発見,早期療育を目指して行うスクリーニングであるが,Pass の結果を過信し,難聴児に必要な対策が遅れることが示唆された。聴覚発達の確認を 1 歳半の健康診査で行うことが Pass 例の難聴の発見や,難聴のハイリスク児の問題解決の重要点であること,健診・療育担当者,耳鼻科医・ST 連携が健診の成果を上げることを報告した。