2020 年 41 巻 3 号 p. 249-253
難聴対策推進議員連盟の設立など,社会での難聴への注目が高まる中,原因診断としての難聴遺伝学的検査の重要性が注目され,日常診療に定着しつつある。先天性難聴の遺伝子診断は2012年から健康保険の対象となり,2015年から19遺伝子154変異の解析が可能となった。さらに若年発症型両側感音難聴の遺伝子診断も保険適応となっている。原因遺伝子変異が同定されることで,難聴の予後予測や介入方法の選択などで有益な情報が得られ,難聴を診療する上で有用なツールとなっている。一方,遺伝子治療は悪性腫瘍や神経疾患などではヒトへの応用が始まっているが,難聴は実験動物や培養細胞レベルの研究にとどまっている。しかし,研究成果には着実な進歩があり,今後,その発展が期待される。