日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
プレガバリン(リリカ® カプセル25 mg・75 mg・150 mg)の薬理学的特徴および臨床試験成績
越智 靖夫原田 拓真菊地 主税荒川 明雄
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2010 年 136 巻 3 号 p. 165-174

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抄録

プレガバリン(リリカ® カプセル25 mg・75 mg・150 mg)は神経障害性疼痛の1つである帯状疱疹後神経痛を適応症として,2010年4月に承認された.ラットの神経障害性疼痛モデルにおいて,プレガバリンの経口投与は静的アロディニア(皮膚を軽く点状に圧することで生じる)および動的アロディニア(皮膚への軽擦で生じる)を抑制した.一方,鎮痛用量のモルヒネは静的アロディニアは抑制したものの,動的アロディニアに対して有効ではなかった.In vitroの検討では,プレガバリンは電位依存性カルシウムチャネルのα2δサブユニットと高親和性で結合することが見出されている.本サブユニットを1アミノ酸変異(R217A)させ,プレガバリンとの結合能を著しく減弱させた遺伝子改変マウスを用い神経障害性疼痛モデルでの効果を検討したところ,本薬による抗アロディニア作用は消失した.したがって,α2δサブユニットへの結合がプレガバリンの作用発現に必須であると考えられた.プレガバリンの臨床薬物動態特性としては,経口バイオアベイラビリティが高く,血漿タンパク質にほとんど結合せず,線形の薬物動態を示す.また,ほとんど代謝されず腎臓から排泄されることから本薬の薬物動態は肝障害による影響を受けない.これらの特性から,薬物動態上の相互作用のリスクが低い.日本人帯状疱疹後神経痛患者を対象としたプラセボ対照二重盲検比較試験(第III相試験)および長期投与試験では,本薬300 mg/日および600 mg/日(1日2回,経口投与)の鎮痛効果が検証され,投与後早期から鎮痛効果を発現することが確認された.主な副作用は,浮動性めまい,傾眠,末梢性浮腫および体重増加であったが,多くは軽度または中等度であり安全性に大きな問題は認められなかった.以上より,プレガバリンは帯状疱疹後神経痛に対し臨床で使用しやすい新たな治療の選択肢になると期待される.

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