2021 年 42 巻 1 号 p. 78-86
経口摂取経験のないまま長期経口挿管管理をうけたことによる嚥下発達の遅れが見られた先天性心疾患術後症例の摂食嚥下機能について検討を行った。その結果,その嚥下機能低下の病態は,長期安静および低栄養に伴う全身,および嚥下関連筋の筋力低下が主体であったが,嚥下中枢機能は保たれ,咽頭期嚥下出力は良好であり,口腔咽頭の嚥下発達段階に合わせた食形態指示やリハビリ介入等により嚥下の予後は良好であった。
また,乳幼児のVFSSにおける舌骨下垂所見は,咽頭収縮力低下,食道入口部開大不良および喉頭侵入リスク等と関連がある可能性があり,口腔期および咽頭期嚥下機能評価や,治療効果判定の指標として有用であることが示唆された。舌骨下垂症例では窒息・誤嚥リスクが高いため,その原因や病態を理解した上で身体・口腔・咽喉頭の発達に合わせた食形態指導,頸部やや前屈位等の姿勢調整,舌および舌骨上筋群の筋力増強を目指した刺激やおもちゃなめ等の積極的な介入が有用である。