WFS1遺伝子変異による進行性難聴を来した小児2症例を経験したので報告する。
【症例1】4歳1か月の女児。新生児聴覚スクリーニング(NHS)はpassであったが,1歳11か月の聴性脳幹反応検査(ABR)では両側無反応であった。2歳6か月の遺伝学的検査で,WFS1遺伝子のc.2051C>T: p.A684Vヘテロ接合型変異が検出された。3歳5か月までに両側人工内耳植込術が実施され,術後の装用閾値は良好である。
【症例2】1歳8か月の男児。出生直後のNHSは両側referであったが,ABRの閾値は右耳40 dBnHL,左耳30 dBnHLであった。しかし生後4か月で右耳75 dBnHL,左耳70 dBnHLに上昇し,補聴器装用が開始された。1歳1か月の遺伝学的検査でWFS1遺伝子のc.2051C>T: p.A684Vヘテロ接合型変異が検出された。
現在両症例に難聴以外の合併症は無いが,視神経萎縮など遺伝子変異に付随した症状を発症する可能性があり,耳鼻咽喉科,小児科,眼科での経過観察が必要である。