小児耳鼻咽喉科
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パネルディスカッション『発達障害にみえる難聴児,難聴にみえる発達障害児』
小児科医から見た発達障害の聴覚的な問題
中村 由紀子
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2024 年 45 巻 2 号 p. 76-80

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抄録

「発達障害は聴覚障害を合併する」というと言い過ぎであるが,発達障害の子どもたちの多くが聴覚認知の問題を抱える.幼児期に受診する未診断の発達障害の子どもには少なからず言語発達遅滞があり,その診療では聴覚検査で難聴を否定することから始めることが多い.自閉スペクトラム症(ASD)では言語コミュニケーションや注意の転換の課題が,注意欠如多動症(ADHD)では注意の維持やデフォルトモードネットワークの課題が見られる.選択的学習症(SLD)の読み書き障害では音韻障害が主体であり,ADHDの合併が多い.発達障害に共通して感覚異常を合併することが多く,聴覚面で見ると聴覚異常により正しく音を聞き取れない場合がある.発達障害は聴覚情報処理障害を合併しやすいのである.本稿では発達障害の聴覚認知に起こる問題として,特に注意障害,デフォルトモードネットワーク,感覚異常について概説する.

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© 2024 日本小児耳鼻咽喉科学会
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