2025 年 46 巻 2 号 p. 64-68
口蓋扁桃摘出術は歴史のある術式だが,術後出血は依然として大きな課題である.本邦では口蓋扁桃の被膜外全摘出術が主流であるが,近年は欧米を中心に世界の多くの地域で,特に小児閉塞性睡眠時無呼吸症に対しては被膜内摘出術へのシフトが進んでいる.被膜を温存することで,神経や血管が多く走行する筋層の露出を回避でき,術後疼痛を顕著に軽減するとともに,術後出血のリスクも極めて低い.これにより手術の安全性は向上し,患児や家族のQOLを改善させ,また術者を含む医療者側の負担軽減にも寄与する.当科では硬性内視鏡下にコブレーターを用いて施行しており,術中出血は極めて少なく視認性も良好であるため,経験の浅い術者への教育にも安全に活用できる.一方で,再増殖の可能性など新たな課題も存在し,十分な事前説明や術後の保存的加療の継続など,適切な対応が求められる.本邦においても,安全かつ有効な被膜内摘出術の普及が望まれる.