抄録
母–子の性格の類似性をみるため、母親に対して、自分の性格測定及び5歳の我が子の性格測定を依
頼した。使用した性格検査は「新性格検査」であった。この検査は、12個の性格特性を測定する。15
組の母–子データについて、母–子間と母–子内の分散分析を行い、母–子の類似性について有意性検定
をした。その結果、「活動性」、「非協調性」、「神経質」、「抑うつ性」に1%水準で有意な類似性が、また、「共
感性」、「持久性」、「攻撃性」に5%水準で有意な類似性が得られた。これら7つの性格特性の級内相関
も有意であった。他の「社会的外交性」、「進取性」、「規律性」、「自己顕示性」、「劣等感」の類似性は有
意でなく、級内相関も有意でなかった。父–子データを欠くので断言できないが、級内相関が有意な7
つの性格特性の形成には遺伝基盤が含まれること、また、級内相関が有意でない5つの性格特性は、生
後の経験的な影響を受けて形成されることを示唆する。