抄録
本稿では、社会ネットワーク分析を使用している研究が、どのような観点からこの分析手法を用いて
いるのか、データを取得するためにどのような手段を用いているのかを整理し、実際に運用する場合を
想定して研究に役立てることを目的としている。関連する論文を概観した結果、調査対象地域に居住す
る人々への質問紙調査や聞き取りで「報告」を求めるものが多数であり、このことは問題を抱えると指
摘されたこのデータ取得方法が客観性の希薄さという問題点を上回って、利用の簡便性を優先して取り
入れられた結果なのだろうと判断できた。またその点を補おうという意味で、議事録など客観的に把握
できる情報を利用した分析も少数ながら存在していることがわかった。しかしながら、定型的な手法が
確立されているわけではなく研究の蓄積も少ないといっていいだろう。組織論からの研究についても同
様のことがいえ、試行錯誤的な位置にあるため今後の研究の蓄積が望まれるということが示唆された。
そしてさらにデータ取得の過程について記述されたものはほとんど存在せず、極めてプライベートな
データをどのように取得できているのか、その過程を明確化することも研究の進展につながると指摘で
きるだろう。