抄録
室内空気中のホルムアルデヒドの標準測定法としては2,4-dinitrophenylhydrazine(2,4-DNPH)試薬を含浸したカートリッジ捕集・溶媒抽出/HPLC法がWHO,米国EPAやJIS等で標準測定法として採用されている。しかし,DNPH法は試薬自体に変異原性や発ガン性が指摘されており,これに替わる新たな測定法の開発が模索されている。本研究においては試薬自体に有害性の無い2,4-ペンタンジオン(2,4-pentanedione,以下2,4-PDと略記)をシリカゲルに含浸した捕集剤を作製し,これをガラス管に充填したアクティブサンプラーを開発した。このサンプラーについて,抽出法の検討,捕集効率,再現性,理論値と分析値の比較,本法とDNPH/HPLC法を用いた実測値の比較等基礎的検討を実施した。その結果,抽出方法は,抽出液(2,4-PD溶液)を直接捕集管に通液する方法を確立することができた。また,ホルムアルデヒド濃度0.03 ppmのガスを用いて繰り返し測定を行った。その結果,繰り返し精度は相対標準偏差で3.5%(n=7)であった。ポリエステルバッグを用いてホルムアルデヒド濃度0.066~0.190 ppmの理論ガスを作製し,これらガスについて,本法と理論ガス濃度の比較を行った結果,理論値に対して本法の測定値は±3.8%以内で一致した。更に,居住環境内で本法とDNPH/HPLC法との同時測定を行った。その結果,両者の測定値には有意な相関が認められ,本法の実用性が確認された。