室内環境
Online ISSN : 2186-4322
Print ISSN : 1882-0395
ISSN-L : 1882-0395
技術資料
収納袋の素材が内部のカビ発育に与える影響
阿部 恵子村田 朋美
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2013 年 16 巻 2 号 p. 89-95

詳細
抄録

日本の夏は外気の湿度が高く,空調や除湿の無い収蔵庫ではカビが発生しやすい環境になりやすい。このような収蔵庫での文化財保管手段として,水蒸気を通さない保存袋の使用について検討した。市販の熱融着可能な膜素材を用いて試験袋9種類を作製し,それらの試験袋にカビセンサ(センサ菌とその栄養分が封入されている)を入れ,ヒートシールにより試験袋を密封した。密封された試験袋を25℃・相対湿度93.6%の高湿環境に曝露し,試験袋内部の微小気候をカビ指数で評価した。カビ指数は調査環境がどの程度カビを発育させやすいか(カビ発育ポテンシャル)を数値化したもので,その測定にカビセンサを用いる。カビセンサを入れた密封試験袋の高湿環境下の曝露期間は2,7,14,28,56,または182日間とした。密封試験袋内の微小気候は使用した膜素材によって異なった。2種類のアルミラミネートフィルム(0.114と0.092 mm厚)の袋内では長期の曝露期間(182日間)においてもセンサ菌の発育が認められずカビ指数は検出下限未満(< 0.3)であった。それに対し,ポリエチレンフィルム(0.01 mm厚)の袋内では短期の曝露期間(2日間)においてセンサ菌が発育し,カビ指数80以上が計測された。アルミラミネートフィルムを用いた保存袋は,夏にカビが発生しやすい環境となる収蔵庫での文化財保存に利用できると思われる。カビ指数調査は,博物館や美術館等における総合的有害生物管理(IPM)の実践において有用と思われる。

著者関連情報
© 2013 一般社団法人 室内環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top