室内環境
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解説
室内環境の微生物に関わる最近の話題(1)
序論:室内環境微生物の諸問題に関わる住宅形態の変化と疾病
川上 裕司
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2018 年 21 巻 3 号 p. 209-216

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抄録

本号より,「室内環境の微生物に関わる最近の話題」のタイトルで微生物分科会メンバー6名によるリレー解説を開始した。室内環境における微生物の問題は年を追うごとに深刻な社会問題となっている。「カビによる室内環境の汚染が引き起こすアレルギーの問題」,「職場や公共施設での感染症やアレルギーの問題」,「近年,頻発している地震,台風,火山噴火などの自然災害に伴う仮設住宅でのアレルギーや感染症の問題」など多岐に渡っている。このリレー解説では,住宅と職場環境にスポットを当て,微生物の汚染実態,感染経路,それに伴う健康影響と対策法について解説する。
序論として,住宅形態の変化と疾病について述べる。室内環境における微生物の感染経路から見ると,1)飛沫感染(droplet infection),2)空気感染(air-borne infection),3)媒介物(食物・接触)感染(vehicle-borne infection)の3つが特に重視されている。このうち空気感染は,気密性の高い住宅や公共施設など現代の室内環境で問題視すべき感染経路であり,アレルギー疾患の増加と対策においても考慮すべき事象である。実際に,幼稚園児から高校生まで鼻・副鼻腔疾患はどの年代でも罹患率が高く,特に小学生と中学生の罹患率が際立っている。また,近年65歳以上の高齢者の喘息罹患者が増加傾向にある。これらの要因として浮遊真菌の継続的な吸入が懸念されている。

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© 2018 一般社団法人 室内環境学会
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