室内環境
Online ISSN : 2186-4322
Print ISSN : 1882-0395
ISSN-L : 1882-0395
総説
東日本大震災後の仮設住宅および帰還困難区域/居住制限区域の一般住宅の室内環境
篠原 直秀
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 22 巻 1 号 p. 55-63

詳細
抄録

東日本大震災後の仮設住宅および居住制限区域や帰還困難区域内の一般住宅の室内環境について, 公表されている結果を整理した。仮設住宅の建築時の室内空気中の揮発性有機化合物類(VOCs)の濃度はアセトアルデヒドと総揮発性有機化合物類(TVOC)を除いて室内濃度指針値を超えていなかった。一方, 居住開始後には多くの住宅でp-ジクロロベンゼン濃度が室内濃度指針値を超えていた。また, 冬季の窒素酸化物は, 室内で燃焼系暖房機器を使用していた住宅において, 高い濃度がみられた。仮設住宅の温熱環境は, 夏季や冬季に不快だと感じられる温湿度になる住宅が多くあり, 深刻な結露や目視できるカビの発生がみられる住宅も少なくなかった。浮遊真菌濃度は, これまでに報告されている一般住宅と比べてかなり高い濃度の仮設住宅が多かった。居住制限区域における一般住宅室内の浮遊真菌は極めて高濃度であり, 帰宅頻度と逆相関がみられた。また, 室内に食品等が長期間放置されていたためか, 発がん性のオクラトキシンを産生するAspergillus section Circumdatiが複数の住宅で検出された。帰還困難区域における一般住宅のハウスダスト中の重量当たりの放射能は, 周辺の屋外の土壌中の重量当たりの放射能と比べてはるかに高く, 原子力発電所における事故後のプルームの通過時に直接室内に入った放射性セシウム粒子が沈降・凝集した可能性が示唆された。

著者関連情報
© 2019 一般社団法人 室内環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top