室内環境
Online ISSN : 2186-4322
Print ISSN : 1882-0395
ISSN-L : 1882-0395
総説
加熱式たばこによる生体影響に関する研究動向
吉田 成一
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 24 巻 2 号 p. 109-116

詳細
抄録

喫煙により様々な健康影響が生じることが明らかになり, 燃焼式たばこの喫煙率が低下している一方, 新型たばことして販売されている加熱式たばこの利用者が増加している。燃焼式たばこによる健康影響はよく知られているが, 加熱式たばこによる健康影響・生体影響については十分に解明されていない。実際, 燃焼式たばこによる生体影響に関する論文数と比較すると加熱式たばこによる生体影響に関する論文数は1%未満である。加熱式たばこによる生体影響に関する論文は主にたばこ製品製造企業から報告されており, 生体影響として, 呼吸器系や循環器系, 免疫系への影響は認められないという報告や燃焼式たばこによる生体影響と比較すると軽微であるという報告され, 加熱式たばこはリスク低減製品であることの根拠を構築している。たばこ製品製造企業以外の研究グループによる研究も行われつつあり, 燃焼式たばこから加熱式たばこへの切り替えにより肺炎が生じたという報告や加熱式たばこによる循環器系への影響は燃焼式たばこと同程度であるという報告もある。さらに, 妊娠中の加熱式たばこの曝露により出生した雄マウスの造精機能が低下する一方, 燃焼式たばこを同等条件で曝露した場合には影響が認められなかったこともあり, 加熱式たばこによる健康影響が必ずしも燃焼式たばこより小さいと言うことを示していない。このように, 加熱式たばこによる生体影響について評価が定まっておらず, 今後, 様々な生体影響評価を行う必要がある。

著者関連情報
© 2021 一般社団法人 室内環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top