室内環境
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24 巻, 2 号
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原著論文
  • 浅沼 光吾, 山﨑 星河, 丸尾 容子
    2021 年 24 巻 2 号 p. 97-106
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では開発したオゾン検知紙及び多孔質ガラス分析チップを用いて室内オゾン(O3)及び窒素酸化物の簡易測定を行い, 3種類の空気脱臭器(製品A, 製品B, 製品C)の使用による空気質への影響を評価した。それぞれの空気脱臭器の吹出口の直近における平均O3濃度は製品A及び製品Bで2.60±0.25 ppmとWHO指針値(0.05 ppm)の50倍を超える値を示し, 製品CはWHO指針値の0.5倍の濃度であった。また, 室内環境基準値の設けられている二酸化窒素(NO2)濃度について, 製品Cは最大30 ppbとWHO及び学校環境衛生基準法の指針値(0.1 ppm及び0.06 ppm)以下であったが, 製品A及び製品Bでは810±235 ppbとWHO指針値の8倍を超える濃度が発生していることが明らかとなった。さらに, 製品Bより放出される平均O3濃度は距離zに対しz-0.60で減少し, 使用時間による濃度の蓄積は確認されなかった。平均NO2濃度については2020年11月と2021年1月の測定において, 距離zに対しそれぞれz-0.42及びz-0.70で減少しており, 室内環境条件による拡散の影響が推測された。
    製品A及び製品Bの使用におけるO3及びNOx濃度の蓄積はないと考えられるが吹出口周辺では基準値を超える濃度であり室内空気質の低下が懸念される。製品CについてはO3及びNO2濃度ともに指針値以下であった。
総説
  • 吉田 成一
    2021 年 24 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/01
    ジャーナル フリー
    喫煙により様々な健康影響が生じることが明らかになり, 燃焼式たばこの喫煙率が低下している一方, 新型たばことして販売されている加熱式たばこの利用者が増加している。燃焼式たばこによる健康影響はよく知られているが, 加熱式たばこによる健康影響・生体影響については十分に解明されていない。実際, 燃焼式たばこによる生体影響に関する論文数と比較すると加熱式たばこによる生体影響に関する論文数は1%未満である。加熱式たばこによる生体影響に関する論文は主にたばこ製品製造企業から報告されており, 生体影響として, 呼吸器系や循環器系, 免疫系への影響は認められないという報告や燃焼式たばこによる生体影響と比較すると軽微であるという報告され, 加熱式たばこはリスク低減製品であることの根拠を構築している。たばこ製品製造企業以外の研究グループによる研究も行われつつあり, 燃焼式たばこから加熱式たばこへの切り替えにより肺炎が生じたという報告や加熱式たばこによる循環器系への影響は燃焼式たばこと同程度であるという報告もある。さらに, 妊娠中の加熱式たばこの曝露により出生した雄マウスの造精機能が低下する一方, 燃焼式たばこを同等条件で曝露した場合には影響が認められなかったこともあり, 加熱式たばこによる健康影響が必ずしも燃焼式たばこより小さいと言うことを示していない。このように, 加熱式たばこによる生体影響について評価が定まっておらず, 今後, 様々な生体影響評価を行う必要がある。
  • 平田 尚也, 諫田 泰成
    2021 年 24 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/01
    ジャーナル フリー
    喫煙は, 能動喫煙者だけでなく受動喫煙者に対しても健康影響が懸念されるため, 医学的にも社会的にも重要な課題である。最近, 国内で加熱式たばこが販売されるようになり, 喫煙者に広く普及している。加熱式たばこはたばこ葉を加熱することで発生するエアロゾルを吸入するものであり, 燃焼による副流煙がないため化学物質が減少しており, 特に受動喫煙者への影響が軽減することが考えられる。しかしながら, 加熱式たばこによる健康への影響に関する科学的知見は不十分と考えられ, 詳細な検証が必要である。
    加熱式たばこと紙巻きたばこと成分比較の結果, 加熱式たばこで低減している化学物質が多いが, 加熱式たばこで増加している化学物質も認められる。我々は, がんの源であるヒトがん幹細胞の増殖アッセイ系を構築し, 喫煙の影響を検討した。その結果, ニコチンやたばこ特異的なニトロソアミンのNNKを同定している。また, 加熱式たばこのエアロゾルから抽出した溶液の曝露によっても, がん幹細胞の増殖が誘導されることから, 今後, 加熱式たばこに含まれる成分を検討する予定である。
    また, 受動喫煙者の疫学研究によれば, 紙巻きたばこに比べて, 加熱式たばこの受動喫煙者で喘息発作や胸の痛みが多いことが報告されており, 検証が必要である。
    今後, 引き続き, 科学的根拠に基づいて加熱式たばこのヒト健康リスクに対する影響が評価されることが期待される。
  • 堀之内 孝広, 小林 純子, 東 恭平, 三輪 聡一
    2021 年 24 巻 2 号 p. 125-133
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/01
    ジャーナル フリー
    喫煙者の健康志向の高まりや2020年4月から完全施行された改正健康増進法を受けて,紙巻きたばこの喫煙から加熱式たばこ製品の使用へと,喫煙者の行動変容が進んでいる。それに伴い,加熱式たばこ製品の開発競争も激しさを増し,加熱式たばこの加熱装置や専用たばこスティックの種類は,年々増加の一途をたどっている。加熱式たばこでは,主流煙中の化学物質量が低減されているが,能動喫煙者や受動喫煙者の健康リスクに関する科学的エビデンスは圧倒的に少ない。また,たばこ主流煙の吸煙プロトコールとして,紙巻きたばこの場合,ISO(International Organization for Standardization)法やHCI(Health Canada Intense)法が標準的な方法として用いられているが,加熱式たばこでは,CORESTA(the Cooperation Centre for Scientific Research Relative to Tobacco)の技術報告書(Heated Tobacco Product-259-CORESTA technical report)が2020年7月に公表されたばかりで,世界標準の方法は確立されていない。本総説では,加熱式たばこ製品の特徴や種類,化学分析のための吸煙条件,加熱式たばこ主流煙の生体影響について,概説する。
  • 関根 嘉香, 山本 匠
    2021 年 24 巻 2 号 p. 135-144
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/01
    ジャーナル フリー
    加熱式たばこは, たばこ葉を直接加熱, または水蒸気を用いて加熱し, 生じたエアロゾルを吸入してニコチンを摂取する装置である。主流煙として発生するエアロゾルは, 水を主成分とする"水滴"であり, 紙巻きたばこのように炭素性粒子(タール)を主成分とするエアロゾルとは, 物理・化学性状が異なる。しかしながら, 物理・化学性状が異なるがゆえに, 加熱式たばこの能動および受動喫煙に伴う健康リスクは, エアロゾル粒子を構成する, あるいは含まれる化学成分の大小関係だけでは測れない可能性がある。また有害化学物質の含有量は, 従来の紙巻きたばこに比べて少ないと考えられているが, 未知・未確認の化学成分の存在も懸念される。そこで本総説では, 加熱式たばこから発生する主流煙エアロゾルの物理・化学性状に関する知見を整理し, エアロゾル中の化学成分の発生およびエアロゾル粒子の挙動について考察した。
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