室内環境
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短報
マスクおよび捕集材によるバクテリオファージの透過性と捕集性能
吉野 秀吉 小川 正之依田 ひろみ高村 岳樹
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2024 年 27 巻 1 号 p. 53-61

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抄録
 マスクや捕集材によるバクテリオファージの透過率および捕集率を測定できる独自の試験装置を開発した。この試験装置を用いて市販の代表的なマスク3種について透過率を測定した。厚めの不織布を薄い不織布2枚で挟んだ3層の不織布製マスクの透過率は,10%と比較的低かった。N95 (Particulate Respirator)マスクは,まったくバクテリオファージを透過しなかった。また,通気性がよいダブルガーゼを9枚重ねたガーゼ製マスクの透過率は56%と高かったことから透過抑制は不十分であった。これらのマスクは,いずれも通気性が悪く呼吸に支障をきたした。そこで,通気性が期待され,バクテリオファージを捕集できる活性炭等の探索を行うこととした。捕集率測定の結果,細孔径や粒子径が異なる4種類の活性炭の内の微粉末炭と5種類(杉,松,楢,マングローブ,竹)の木材を燃料用に炭化した木炭を粉砕した杉,松,楢の粉砕木炭(粒子径0.1~0.3 mm)に高い捕集率が認められた。さらに,粉砕木炭の細孔や細孔容積,比表面積および走査電子顕微鏡(SEM)写真の表面構造から捕集率を高くする要因は,細孔容積や比表面積が大きく,複雑な表面構造にあると推定された。特に粉砕杉木炭は,嵩密度が小さいため,少量での高い捕集率や,充填厚さ,5 mmでの長時間の捕集効果も認められた。また,実用化に当たって,杉は国内に大量に存在し,その木炭は柔らかくて粉砕し易いなどの利点もあるので,マスクへの適用可能性が高い。
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© 2024 一般社団法人 室内環境学会
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