抄録
1997年に採択されたマイアミ宣言や,2006年に採択されたドバイ宣言に見られるように,小児や胎児の健康保健に関する認識が高まり,様々な取り組みが始まっている。室内空気中の代表的な汚染物質のひとつであるトルエンについても,従来から知られている毒性に加え,発達期曝露による脳・神経系への影響が明らかになりつつある。トルエンのような揮発性有機化合物の生体影響研究においては,毒性影響を調べるとともに体内動態も確認する必要があるが,胎仔や新生仔を研究対象とした場合には,微量試料に適用可能かつ簡便な手法が求められる。マイクロ固相抽出法の利用はそのひとつとして有用である。未成熟個体の脆弱性に注目した感受性研究は今後さらに進められる必要がある。