抄録
シルクは耐熱性や機械的物性が優れた天然素材であり,もっぱら衣服に使われてきた.シルクのポリプロピレン(PP)への添加では,射出成型機への直接投入によるシルク“ダマ”の形成が懸念されていた.溶融した樹脂と添加物との複合化では,水等の添加によって樹脂内での添加物の分散性が向上することが知られている.一方で,シルクを170℃以上に晒すことで脱水分解による過熱水蒸気の発生が近年報告されていた.
本稿では,複合材の熱的および機械的な性能向上を得るために,シルクから発生する過熱水蒸気を積極利用した“ダマ”の生成抑制に取組んだ.結果,PP内でのシルクの良好な分散が実現でき,狙いとする性能向上を達成した.その成功の鍵は,樹脂への混練温度を210℃にしたことであった.すなわち,シルクは,この高温に達するまで水を保持する能力があり,一種の「水の貯蔵庫」として機能するという,新たな特性を見出すことができた.