理科教育学研究
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原著論文
酸性雨学習における溶存イオン総量の簡易測定法
田中 優至岡田 年史尾関 徹
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1999 年 40 巻 1 号 p. 25-33

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抄録

新教育課程では総合的学習が取り上げられ,その一つの柱として環境教育の推進が望まれている。本論文では,環境問題の一つである酸性雨を取り上げ,雨水試料中の汚染イオンの総量をpHメータと電導度計の読みから簡便に計算する方法について報告する。酸性雨の問題をその発生起源や汚染機構に関連させて考える場合,pHの値を単に評価するのではなく,雨水を汚染している汚染物質の総量について議論することが必要である。しかし,イオン濃度を精確に測定するために研究機関などで用いられているイオンクロマトグラフ装置は高価で扱いにくいため,中学校や高等学校などの教育現場で実際に使うことはできない。一方,pHメータや電導度計は教育現場にすでに導入されているところが多く,また,溶液の電導度はその溶液中のイオン濃度にほぼ比例するので試料溶液中のイオン総量の目安となる。しかし,個々のイオンは異なった電気の伝えやすさ(当量イオン電導度)を示すため,単純に電導度の値を汚染イオンの総濃度とみなすことはできない。特に,水素イオンは他のイオンに比べて格段に大きな電導度を持つことを考慮しなければならない。また,電導度の単位はμS cm−1であり,この単位の持つ具体的なイメージを生徒達に伝えることは困難である。本研究では,実際に兵庫県の赤穂地区と阪神地区の武庫川周辺で採水した雨水試料の化学分析を行い,実際のイオン総量を測定し,種々検討の結果,このイオン総量の実測値が,pHメータの読み(pH)と電導度計の読み(EC)を用いて,次の計算式を用いて計算される値,CTotal,とよく一致することがわかった。CTotal = 10−pH + (EC x 10−3 − 349.81 x 10−pH)/67.7 また,pHが4.5より大きい試料では,もっと簡単な式が適用できる。CTotal = EC x 10−3/67.7 (単位は当量濃度)

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© 1999 日本理科教育学会
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