理科教育学研究
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原著論文
小・中学生の溶解概念に関する実態調査
宗近 秀夫
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2000 年 40 巻 3 号 p. 13-22

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抄録

子ども達の抱く溶解に関する既有概念を科学的概念に変容させるためには,どのような授業構成を行えばよいのか。また,どのような教授ストラテジーを採用すればよいのか。実験授業を通して理論的枠組みを明らかにしたいが,本研究は,そのための基礎研究として,広島県内の小学校第3学年から中学校第3学年までの児童・生徒2404名を対象に,小学校第5学年で扱う溶解学習事項について子ども達がどのような認識を持っているのかを実態調査したものである。調査結果より,以下の諸点が指摘できる。1.「透明か,透明でないか」という視点がないところでは,子ども達は自分の日常生活上の行為を基準にして「とける」という言葉を使い分けている。溶解学習において,溶液の透明性を強調することが重要である。2.小学校中・高学年を通して,50%以上の子ども達が粒子をイメージしている。粒子概念形成の教授方略の一つとして,小学校での粒子的イメージの導入の可能性は検討されてもよいであろう。3.溶液の均一性に関しては,小学生も中学生も共に認識は不十分である。また,飽和に関する認識も十分ではない。4.溶質の溶かし方に関しては,小学校中学年では多様な方法を考えるが,学年が進むにつれて加熱する,水を加える,攪拌するという方法に収束する。5.溶質の質量保存に関する理解も十分ではない。中学生でも,物は「とける」と重さが軽くなると考える子どもが多い。6.溶質の質量保存に関する理解が不十分な子どもは,砂糖や食塩,粉ミルクという溶質の違いによって溶かすと質量が変わると考えているようである。

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© 2000 日本理科教育学会
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