理科教育学研究
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原著論文
主要な進化学説についての生徒の捉え方に関する研究 : 4つの進化学説に対する中学生・高校生・大学生の反応
福井 智紀鶴岡 義彦
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2001 年 42 巻 1 号 p. 1-12

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抄録

Darwin の自然選択説やLamarck の用不用・獲得形質遺伝説などの主要な進化学説が提示された際に,それを生徒がどのように捉えるかを調査した。調査は,中学生・高校生・大学生に対して実施した。捉え方について,学校段階による差異が見られるかにも着目した。調査は質問紙法で行った。まず,ある進化事象の例を提示した。次に, この進化事象がどのように説明されるべきかについて, 4つの主要な進化学説(自然選択説,用不用・獲得形質遺伝説,定向進化説,大突然変異説)に基づく4人の答えを提示した。被験者に, この4人の説それぞれに対する賛成・反対を, 4段階尺度で回答させた(賛否得点として得点化した)。さらに問題毎に,誰に一番賛成できるかも回答させた。問題は3題で, 1題は退化の事象を提示した。調査の結果,以下の点が明らかになった。1) 現在科学的に妥当とされる自然選択説は,学校段階の上昇とともに支持が増加している。特に,大学生ではこの説の支持が高い。ただし退化の事象についてのみは(実際にはこれも進化の事象であるにも関わらず)学校段階による差異が見られず,大学生による支持も高くない。2) 用不用・獲得形質遺伝説は,現在は科学的に妥当とはされていないにも関わらず,支持は比較的高い。特に,高校生における支持が中学生・大学生と比べて高い。3) 定向進化説は,中学生の支持か高校生・大学生と比べて高い。4) 大突然変異説については,中学生・高校生・大学生の全てで,支持は非常に低い。5) 一番賛成できる説について,およそ3~4割の者は3問題に一貫した回答をした。自然選択説を一貫して選択した者は,大学生では24.1 %と比較的多数存在した。一方で,用不用・獲得形質遺伝説を一貫して選択した者は,中学生・高校生・大学生いずれにおいても1割以上いた。

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© 2001 日本理科教育学会
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