Darwin の自然選択説やLamarck の用不用・獲得形質遺伝説などの主要な進化学説が提示された際に,それを生徒がどのように捉えるかを調査した。調査は,中学生・高校生・大学生に対して実施した。捉え方について,学校段階による差異が見られるかにも着目した。調査は質問紙法で行った。まず,ある進化事象の例を提示した。次に, この進化事象がどのように説明されるべきかについて, 4つの主要な進化学説(自然選択説,用不用・獲得形質遺伝説,定向進化説,大突然変異説)に基づく4人の答えを提示した。被験者に, この4人の説それぞれに対する賛成・反対を, 4段階尺度で回答させた(賛否得点として得点化した)。さらに問題毎に,誰に一番賛成できるかも回答させた。問題は3題で, 1題は退化の事象を提示した。調査の結果,以下の点が明らかになった。1) 現在科学的に妥当とされる自然選択説は,学校段階の上昇とともに支持が増加している。特に,大学生ではこの説の支持が高い。ただし退化の事象についてのみは(実際にはこれも進化の事象であるにも関わらず)学校段階による差異が見られず,大学生による支持も高くない。2) 用不用・獲得形質遺伝説は,現在は科学的に妥当とはされていないにも関わらず,支持は比較的高い。特に,高校生における支持が中学生・大学生と比べて高い。3) 定向進化説は,中学生の支持か高校生・大学生と比べて高い。4) 大突然変異説については,中学生・高校生・大学生の全てで,支持は非常に低い。5) 一番賛成できる説について,およそ3~4割の者は3問題に一貫した回答をした。自然選択説を一貫して選択した者は,大学生では24.1 %と比較的多数存在した。一方で,用不用・獲得形質遺伝説を一貫して選択した者は,中学生・高校生・大学生いずれにおいても1割以上いた。
本研究では, コメット法による評価シートを活用して,物理・化学概念に関わる命題文の真偽判断に際して,実際に子どもが適用する論理について推定し,その特徴について考察した。そして,主として以下のような知見を得たので報告する。(1) 物理・化学概念に関する命題文の真偽を判断する際,二値論理学以外の論理を用いる子どもが存在すること。(2) 科学・技術に対する子どもの受け止め方か,子どもの命題論理の運用に影響する場合があること。(3) 電動玩具や家電製品の使用経験が,子どもの命題論理の運用に影響を与える場合があること。
本研究では, コメット法による評価シートを活用して,地学概念に関わる命題文の真偽判断に際して,実際に子どもが適用する論理について推定し,その特徴について考察した。そして,主として以下のような知見を得たので報告する。(1) 地学概念に関する命題文の真偽を判断する際,二値論理学以外の論理を用いる子どもが存在すること。(2) 時間と空間に対する子どもの未分化な認識状態が,命題論理の運用に影響する場合があること。(3) 小学校理科において未定義のまま使用されている地学用語が,子どもの命題論理の運用に影響する場合があること。(4) 未来予測に対する子どもの受け止め方が,子どもの命題論理の運用に影響する場合があること。
現在,高校生物の授業では,土壌中の微生物の存在と働きを,生態系の中での分解者として学習している。しかし,これに関する教材化の研究は活発とはいいがたく,報告も多くはない。その中で,バクテリア(分解者)の存在を視覚的に判定できる方法として,バクテリアによるリバーサルフィルム(カラースライドフィルム)の腐食を利用する実験が報告されている。しかし,バクテリアの活動の度合いを定量的に評価するまでは至っていない。本研究では,リバーサルフィルムの腐食の程度を,自作比色計で測定し,半定量的にバクテリアの活動の指標となる方法を開発した。また,土壌の「化学分析」を行い, この結果と「バクテリアによるリバーサルフィルムの腐食度」の結果とを比較したところ,「バクテリアによるリバーサルフィルムの腐食度」と「化学分析」の「有機物含量」に相関関係が見いだされた。