理科教育学研究
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簡易土壌評価法による実践研究 : 概念地図(CONCEPT MAP)を使っての分析
永川 元
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2002 年 42 巻 2 号 p. 35-42

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抄録

筆者は,土壌微生物の働きに関する教材として,それまでに報告されたリバーサルフィルムによる定性的な土壌評価実験を改良し,フィルムの腐食の程度を,簡易自作比色計によって,半定量的に評価する方法を報告している。今回, このフィルムによる土壌の評価方法を使って,実際のクラブ活動での教育実践研究を行った。その実践の中で,生徒たちの土壌に対する概念構造化がどのように形成されるかを,概念地図を用いて分析を行った。その分析の中で,生徒が使用した概念ラベルを,「日常語彙」・「準専門語彙」・「専門語彙」という3つの語彙グループに分ける試みを行った。それをレーダーチャートとして図示することにより,地図上における語彙の使われ方の特徴を捉えることかできた。また,それにより生徒個々の実践前後や他人との概念ラベルの比較が容易になった。さらに,概念ラベルのレーダーチャートと概念地図の構造とを比較し,概念地図を「日常的理解」・「科学的理解」・「統合的理解」の3つの段階に分ける試みを行った。その結果,この実践を通して,生徒のそれぞれの「概念ラベル」が,専門化,階層化,複雑化,関連化していることがわかった。つまり,生徒の概念ラベルのレーダーチャートおよび概念地図の構造とを分析検討することにより,彼らの「土壌」に対する概念構造が,実践前の「日常的理解」から実践後の「統合的理解」へと変容していくことを明らかにすることができた。

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© 2002 日本理科教育学会
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