動物園・水族館(以下動物園と称す)は,子どもが体験を通して動物や環境との関わりを学ぶ場としての可能性を有する。しかしながら,わが国では学校教育での動物園利用の位置づけが明確でなく,また,つぎに「どのような指導を行えば教育効果が上がるか」という研究は,今まで十分になされてきていない。本研究は,学校における動物園利用の教育的意義を検討するとともに,利用の実態を明らかにした上で,効果的指導法のあり方を探ることを目的とした。そこで,動物園の特性は「生きた野生動物の展示」であり,展示動物との関わり合いを通して「生命」と「共生」についての理解を図ることが動物園利用の教育目的であると措定した。しかるに,利用の実態を調査したところ,教師側は「生命」についての理解を期待しているものの,「共生」理解に関する期待値が動物園側よりも低く,双方の目標に齟齬のあることが認められた。また,教師側・動物園側ともに動物園見学による教育効果に満足する割合は期待値よりも低く,さらに動物に関する事前指導を実施した学校は42 %に留まっていることが示された。そこで,効果的指導法のあり方を探るために,児童に観察したい動物のイメージを表現させる事前指導法を試行した結果,動物の新たな事実を発見するという効果が示された。また,当日の指導内容を検証した結果,観察に重点を置く指導が動物に対する関心を高め,また,獣医によるレクチャーが生命についての理解を深める効果をもたらした。さらに,感想文の分析により,話し合いを導人した指導法の重要性が示唆された。以上の結果から,動物園利用による指導のあり方として,「問題意識の喚起」「観察と記録」「動物園側からの情報提供」「話し合い」が有効と認められた。さらに,具体的な教材を導入して理科学習と関連させた指導法の実践案を提示する。
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