2005 年 45 巻 3 号 p. 31-42
本研究では,科学カリキュラム作成の背後関係を,作成者,行政関係者,科学教育研究者の3者の視点から検討・分析を行うために,インタビュー調査と文献調査を基に研究を進める新しいアプローチを起用し,ナショナル・カリキュラム科学の作成過程に焦点を当て,主として政治的文脈から科学カリキュラムそのものの「意味」を探ることを目的とした。その結果,次のことが明らかとなった。①ナショナル・カリキュラム科学の作成過程では官僚的統合が見受けられ,加えて,その背後では諸々の権力関係が取り巻きさまざまな続制が複雑に働いていたこと。②その中心は理科教師や科学教育研究者で構成された科学作業部会からの専門的統制と,学校教育の中央集権化を図る中央政府からの官僚的統制であること。③ナショナル・カリキュラム科学はこれらの対立という過程を通して構成されたものという見方もできること。