理科教育学研究
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原著論文
自作教科書作りの活動からみた「生徒が考えるわかりやすさの要件」についての実践的研究
神崎 弘範西川 純久保田 善彦水落 芳明桐生 徹
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2010 年 50 巻 3 号 p. 77-90

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抄録

生徒による自作教科書作りの活動を行い,毎授業後のアンケート用紙や完成した自作教科書に「わかりやすくするためのエ夫」を記入させた。このエ夫について分析することを通して,通常は学び手である生徒が考えるわかりやすさの要件について明らかにすることを目的として考察を行った。その結果次のようなことが明らかとなった。「生徒が多く取り入れた工夫」から見た「生徒が考えるわかりやすさの要件」として次の6点が挙げられる。①表やグラフや図を用いる。②実際の実験の様子を写真撮影し掲載する。③具体的な例を挙げる。④要点を絞るなど端的な表現にする。⑤語旬の字体や色を変えるなどして強調する。⑥見出しの色を変えるなどする。これらの「生徒が考えるわかりやすさの要件」は上記①から③までが該当する「詳しさ」と,④から⑥までが該当する「見やすさ」に大別できる。一方,「実際の実験データを示す」という工夫は生徒により判断が分かれた。実験データを示す意図としては次の2点が推察される。1点は,実験データを示すことで実験→結果(実験データ)→結論という理科の学習過程にそった記述を可能にするという意図である。もう1点は,生徒が実験を行う際に生じる自分達の実験データに対する不安を解消するという意図である。一方,実験データを示さない意図として,次の1点が推察される。自分達で実験を行い,結果を導き出すことの重要性を考慮した結果答えとなるような実験データは自作教科書に示さない方がよいという意図である。

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© 2010 日本理科教育学会
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